SGLT2阻害薬が糖尿病性腎臓病を抑制する機序を解明 ~『Cardiovascular Diabetology』に掲載~
種々の疾患に対する新しい治療薬が開発される場合には、基礎研究での作用機序解明成果からトランスレーショナル研究、そして臨床介入研究によって実際にヒトでの治療効果が実証されることが通常の流れになります。しかしながら、本研究の対象であるSGLT2阻害薬の場合には、高血糖改善作用以外の直接的な臓器保護作用は想定されていなかったにもかかわらず、ヒトを対象とした最近の大規模臨床試験において予想を超えた多面的な臓器保護作用の可能性が示されつつあります(文献3)。そして、通常の場合とは順序が逆になりますが、本来糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が多面的な臓器保護作用を発揮するメカニズムの解明研究が非常に注目されています。そのため、例えば、日本腎臓学会/日本腎臓病協会では産学連携包括契約を締結して機序解明を図ることも推進し、田村功一主任教授も積極的に関わっています(https://j-ka.or.jp/newsinfo/2019/07/post-15.php)。
このように、本研究成果の意義は、ヒトでの大規模臨床試験で多面的な臓器保護作用の可能性が示されながら、その臓器保護作用の機序に依然として不明な点が多いSGLT2阻害薬について、血圧、特に最近予後との強い関連性が示されている家庭血圧の改善作用という、新たな臨床的作用機序のエビデンスを示した点にあります。
2型糖尿病は高血圧を合併することが多く、また、日本人には食塩感受性高血圧も多くみられます。田村功一主任教授が理事を務める日本高血圧学会が2019年4月に発表した最新の高血圧治療ガイドライン2019 (以下JSH2019; https://www.jpnsh.jp/guideline.html)糖尿病合併高血圧に対する第一選択薬降圧薬としても、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB・ACE阻害薬)、Ca拮抗薬、利尿薬が併用療法を含めて推奨されています。反面、利尿薬には、副作用として高尿酸血症、高中性脂肪血症、耐糖能低下、低ナトリウム血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症など代謝系・電解質調節系への悪影響があります。">では、利尿薬は主要選択薬とされ、糖尿病合併高血圧に対する第一選択薬降圧薬としても、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB・ACE阻害薬)、Ca拮抗薬、利尿薬が併用療法を含めて推奨されています。反面、利尿薬には、副作用として高尿酸血症、高中性脂肪血症、耐糖能低下、低ナトリウム血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症など代謝系・電解質調節系への悪影響があります。糖尿病合併高血圧に対する第一選択薬降圧薬としても、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB・ACE阻害薬)、Ca拮抗薬、利尿薬が併用療法を含めて推奨されています。反面、利尿薬には、副作用として高尿酸血症、高中性脂肪血症、耐糖能低下、低ナトリウム血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症など代謝系・電解質調節系への悪影響があります。">
一方、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬は、降圧利尿薬の分類には該当しませんが、これまでの研究においてナトリウム利尿効果、降圧効果、そして心血管腎臓病の抑制効果が報告されてきました。そのためSGLT2 阻害薬が糖尿病合併高血圧での治療薬として有用である可能性についてJSH2019でも言及されています。今回の研究成果によって、元来糖尿病治療薬のSGLT2 阻害薬が、2型糖尿病患者において、診察室血圧の降圧のみならず、予後においてより重要とされる家庭血圧指標を改善しうる次世代の降圧薬“としても有用である可能性が示されました。本研究グループでは、引き続き心血管腎臓病に対する診察室血圧・診察室外血圧(家庭血圧、自由行動下血圧)での血圧変動指標を軸にした包括的治療戦略研究を推進し、心血管腎臓病に克つための”横浜発”のエビデンス創出に向けての研究展開を図っていきます。
なお、本研究に関連して、国内では2019年10月25日~27日に京王プラザホテルにて開催される第42回日本高血圧学会総会(http://www.jsh2019.jp)でのシンポジウム「次世代降圧薬の開発と臨床研究/第1会場」、海外では2019年11月5日~10日に米国ワシントンにて開催される第52回米国腎臓学会総会(ASN Kidney Week 2019, 52nd Annual Meeting & Scientific Exposition of American Society of Nephrology)において、田村功一主任教授による講演が予定されています。
(2019/09/03 19:16)