治療・予防

まぶたがぴくつく顔面けいれん 
日常生活に支障があれば治療を

 顔面けいれんは、顔の表情を作る筋肉が自分の意思とは関係なくけいれんする病気だ。片側の目の周りがぴくぴくと動き、頬などにこわばりが生じるため、不快感が強く、仕事や対人関係に支障が出ることも少なくない。三井記念病院(東京都千代田区)脳神経外科の尼崎賢一科長に聞いた。

 ▽症状は顔の片側だけに出現

 顔面けいれんは、脳の深部で顔の筋肉を動かす顔面神経に血管が接触して圧迫刺激を受け、興奮状態になることによって起こる。ただ、血管が顔面神経を圧迫する原因は不明だという。中高年の女性で発症しやすい。

 両側のまぶたが動く眼瞼(がんけん)けいれんとは異なり、片側の目など顔の左右どちらかに生じる。最初は目の周りのぴくつきから始まり、頬のこわばり、口元のひきつれに広がるのが特徴で、進行すると症状が出る時間が長くなり、まれに一日中けいれんが止まらなくなることもある。

 病気自体は命に関わるものではないが、尼崎科長は「顔面に症状が出るため、どうしても周囲の目が気になってしまう。日常生活に支障が出るなどして悩んでいる場合は、治療を検討しましょう。逆に支障を感じないのであれば、治療する必要はありません」と話す。

 ▽手術では聴力低下に注意

 治療法は、抗てんかん薬や精神安定薬などによる薬物療法、ボツリヌス毒素療法、手術の三つの選択肢がある。ただし、薬物療法は効果が低く、現時点で決め手となる治療薬はない。

 ボツリヌス毒素療法は、けいれんしている部位に注射することで、筋肉を弛緩(しかん)させて症状を抑える治療法だ。「全身の副作用が表れることはほとんどありませんが、投与から3~4カ月で効果がなくなるので、繰り返し注射する必要があります」と尼崎科長。

 根本的な治療法としては、「頭蓋内微小血管減圧術」という手術がある。耳の後ろを切開し、頭蓋骨に小さな穴を開け、顔面神経を圧迫する血管を離して、当たらないように固定する方法だ。

 治療効果は高いが、術後に聴力低下などの聴力障害が表れる可能性がある。手術中に顔面神経の周囲にある聴神経に負荷がかかるためだ。合併症の回避のためには、一定以上の技術と熟練を必要とするため、経験の豊富な医師の手術を受けることが望ましい。「周囲の人が思う以上に、患者さんは悩んでいます。家族も患者の気持ちや状況を十分に理解し、治療法のメリットとデメリットを納得した上で選択することが大切です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)


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