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新型肺炎、困難な初期診断 
課題抱える受診機関側

 もう1人は19年20日から武漢に滞在していた41歳の日本人男性で、帰国した今年1月31日から38度の発熱と軽いせき症状が出、同日入院してウイルスの検査を受けた。 入院時も発熱はあったものの呼吸に異常はなく、ウイルス検査で感染が確認された後の胸部X線とCT検査で肺炎と思われる異常が発見できたが、酸素吸入などは必要とされなかった。

新型コロナウイルスに看護師が院内感染したとみられる事態を受けて会見する神奈川県と相模原市の担当者=17日午後、同県庁

新型コロナウイルスに看護師が院内感染したとみられる事態を受けて会見する神奈川県と相模原市の担当者=17日午後、同県庁

 この2人の男性患者は、具体的な症状は急性上気道炎と同じで、肺炎患者のような激しいせきや呼吸困難といった症状は出ないまま回復に向かった、という。このように症状の変化が多様な上に遺伝子検査の受け入れ能力に限度がある以上、軽症患者と症状が似ている風邪の患者らを初期の診察で見分けることは非常に難しいのが実情だ。

 ◇院内感染の防止がカギ

 横浜市で開催された日本環境感染学会学術総会で副会長を務めた東京医療保健大学大学院の菅原えりさ教授(感染制御学)は、市中感染では、感染しやすい高齢者や免疫が低下している患者、医療関係者への院内感染の防止策が重要だと強調した。既に、和歌山県と神奈川県の病院で院内感染とみられるケースが発生している。

 「市中感染の場合、新型肺炎の患者が予告なしに飛び込んで来る。各医療機関の水際でどうやって患者を見つけ、院内での感染拡大を防ぐのが大きな課題だ」

 診断時には他の患者と接触しないように個室に誘導し、診察する医師は気密性の「高いN95マスク」と「アイシールド(ゴーグル)」を装用し、診療後には窓を開けて室内の換気に努めるようアドバイスする。入院時や重症化してウイルス感染の危険性が高いと予想される患者への対応は、可能であれば空気が外に漏れないようになっている室(陰圧室)で、必要に応じて十分な防護服を装着することを勧める。

マスクをして介護に当たる老人ホーム職員ら(千葉市)

マスクをして介護に当たる老人ホーム職員ら(千葉市)

 ◇予防に事前練習

 こうした措置は感染拡大の防止だけでなく、医療スタッフや周囲の患者の安心感にもつながる。菅原教授は「防護服は着用より脱ぐときの方がより注意が必要だ。事前に練習をしておくことが望ましい」と言う。

 その上で、医療機関だけでなく長期療養型施設や高齢者施設での集団感染に対して最新の注意を払って対応する必要がある、と指摘。新型コロナウイルスが主に飛沫(ひまつ)感染すると想定されることから、手洗いや消毒などの手指衛生の徹底や診療時のマスクやガウンの使用などを徹底するよう呼び掛けている。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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