遺伝子検査 家庭の医学

 ヒトが親から受け継いだDNAに異常がないか、がん組織などで異常な遺伝子が活動していないかをみるのに、最近急速な進歩を遂げた検査法です。細胞の中にあるDNAを抽出し、DNAの中の注目する部分をPCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)で何十倍にも増幅して、遺伝子の塩基配列(核酸の並びかた)の異常を検出します。今日では肺がん、大腸がん、乳がんをはじめさまざまながんで、がん遺伝子検査により治療薬の効果が期待できるかどうかが判断できるようになり、治療法の選択に役立っています。
 がん組織以外に、白血球、皮膚や髪の毛、体液なども検査材料となり、保存状態がよければ、ミイラや化石でもDNAの検査が可能です。また、血液中にわずかに存在するエイズや肝炎ウイルスなどの病原体も、特徴的な塩基配列に注目することで、この方法で検出可能です。
 遺伝子検査は遺伝性疾患だけでなく、生活習慣病やアレルギー疾患のなりやすさについて調べる際にもおこなわれます。

(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)