Dr.純子のメディカルサロン
コロナ対策、それで大丈夫?~感染制御の専門家に聞く~ 堀賢・順天堂大学大学院教授(後編)
◆マウスシールドって安全?
海原 マウスシールドの予防効果はどうでしょうか。屋内プールでアクアビクス指導員がマウスシールドだけ着用して、大声を出しながら45分くらい指導している実例があります。
マウスシールドを着用して記者会見に臨む麻生太郎副総理兼財務相(2020年9月撮影)【時事通信社】
堀 マウスシールドは、普通の飛沫が飛ぶのを止めることはできますが、マイクロ飛沫を抑えることはできません。ですから、3密の空間にいれば、マイクロ飛沫感染のリスクが非常に高くなります。
屋内で、どんな場面でも一番に推奨されるのは、マスクです。材質は不織布が最も高性能ですが、布製でも構いません。
マスクは、飛沫もマイクロ飛沫も防ぐことができます。「何のためにマスクをするのか」ということをきちんと理解していないと、まずいです。
最近言われ始めた扇子で口元を隠すしぐさも、原理はマウスガードと同じで、マイクロ飛沫はカットできません。
◆ワクチン登場で世の中は変わるか
海原 最近では、英国や米国で90~95%有効なワクチンの開発が最終段階まできているということが報道されるようになってきました。
約100年前のポスター。当時の感染対策はそのまま現在でも通用するものばかり(堀賢教授提供)【時事通信社】
堀 「新しいワクチン、よく効きそうだ」と、前評判が高いですが、私はちょっと冷静に見ています。
ワクチンは「健康な人に投与するのが前提」ですので、病気の人を治すために投与する新薬よりも、ずっとずっと安全性に関する要求レベルが高いのです。
例えば、末梢神経が侵されて、力が入らなくなってしまったり、感染によって、逆に強いアレルギー反応が出てしまったり、というような重篤な副作用が、100万人に接種して4~5人も出たら、即開発中止になってしまうほどなのです。
過去のワクチン開発のデータでは、このような開発中止の危機をくぐり抜けて、無事に承認に至ったワクチンは、たった3%ぐらいしかないのです。
ファイザーのワクチンは、治験段階でわずか4万3000人に投与して、重篤な副作用の懸念はなかったとのことですが、承認後に大量に使用され始めたら、4万3000人では確率が低すぎて、出てこなかった副作用が見つかる可能性も大いに残されているわけです。
それに今回のワクチン、「mRNA」という遺伝子を使用した新しい形の初のワクチンで、人類で承認を受けるのはこれが初めてです。未知の副作用が出てくる可能性もあり、手放しで喜ぶ気にはなれないのです。
約100年前のポスター(堀賢教授提供)【時事通信社】
海原 コロナとの付き合いは、まだまだ長くなりそうですが、クリスマスやお正月は、どのような心構えで過ごせばいいでしょうか。
堀 手洗いやマスクの着用など、古典的で基本的な感染対策、それと、3密回避やソーシャルディスタンスを確保するなどの最新の疫学的知見に基づいた新しい感染対策を併せて、地道に行っていく以外にありません。
およそ100年前に起きたスペイン風邪の時に、内務省の衛生局(現在の厚生労働省)が発行した「流行性感冒」を読むと、現在推奨されていることとそっくりな対策が、そのまま推奨として掲載されています。
これらの感染対策は、100年間、進歩していないとも言えますが、長い時間をかけて磨かれた「不朽の対策」とも言えるわけです。信頼できるワクチンができるまでは、自分の身を守る手段として、お友達になりましょう。
堀賢教授
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(2020/11/30 05:00)