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「春バテ」していませんか?
~今年はコロナ禍で疲れやすく~ 医学博士 福田千晶

 この季節になると、人間ドックや健康診断の受診者にも自覚症状で「疲れやすい」と訴える人が増えます。これは例年のことですが、コロナ禍でもある今年は、さらに多くの人が疲れやすさを感じているように思えます。

小学校の入学式=写真はイメージです

小学校の入学式=写真はイメージです

 春は日照時間が急に長くなります。夕方は5時になってもまだ明るく、活動しやすい時間帯になります。もちろん朝も6時ごろには明るくなるので、早めに目が覚めるでしょう。冬に比べて、一日の活動時間が長くなり、場合によっては動く量も増え、睡眠時間は減ることになります。それだけでも、疲れやすいわけです。

 また、春は日によって寒暖差が大きく、昼間と朝夕の気温差も拡大しています。地域により異なりますが、3月では日によって昼間は25℃位まで上がります。寒い日の最低気温は、関東でも10℃以下まで下がり、一日の気温差が10℃以上になることも珍しくありません。

 本来、体は自律神経の働きで気温や湿度などの変動に合わせて、血管の太さや、心臓の動き、消化器の働き、体温などを調整しています。しかし、あまりにも急激な著しい変化の場合、そのときの気象などの状況には、対応しきれない身体の設定になってしまうこともあります。そのときは、体には負担が掛かることになります。

3~5月の身体の不調=「ウーマンウェルネス研究会」の意識調査より

3~5月の身体の不調=「ウーマンウェルネス研究会」の意識調査より

 さらに自律神経は、ストレスによっても乱れが生じます。3月は年度末や卒業シーズンでもあり、一区切り付けるために行うべきことが多く、忙しい人も多いでしょう。4月になると異動で業務が変わったり、関係者の名前などを覚えたり、やるべきことがいろいろあります。職場に新人が入ってくれば指導するという仕事も増え、大変だと感じることもあります。

 入学後の新生活、朝は出かける時刻が早くなる、家族は子供の弁当作りが始まるなど、生活の変化もあります。この時期は、とてもストレスが加わりやすい時期なのです。

 私もメンバーである「ウーマンウェルネス研究会」で首都圏在住の835人(20~50歳代男女)によるデータでも、「2020年春に寒暖差が身体にこたえる(つらい)と感じた割合」は54.5%でした。「3~5月に身体の不調」を経験した人は64.1%、「3~5月に精神面の不調」を経験した人は50.8%でした。半数以上の人は身体的にも精神的にも不調を感じているわけです。

 今年はコロナ太りした人もいます。もし、3キロ体重が増えたなら3キロの荷物を、5キロ増えたなら5キロの荷物を背負って生活しているわけです。疲れやすく、バテることにもなります。食生活の見直しと適度な運動を組み合わせて、理想体重を目指しましょう。

 その上、コロナ禍でしばらく休会だった会合や友達付き合いが復活し、楽しめるだけではなく、時によっては時間的にも体力的にも精神的にも負担が増えます。これも疲れやストレスにつながります。

3~5月の精神面の不調=同

3~5月の精神面の不調=同

 例年以上に「春バテ」しやすい今年の春は、留意して過ごしたいものです。ましてや「体調が悪い」「疲れが取れない、倦怠(けんたい)感」などがあると、「新型コロナウイルスに感染したのでは?」と心配になり、受診やPCR検査が必要になりかねません。今年は特に「春バテ」しないで、元気に過ごしたいものです。

 そのために、まず気温の変化に対応できるように衣服の調節や室温の調整は小まめにしましょう。重ね着をして昼間は気温が上がったら脱いでいき、夕方に肌寒くなったらカーディガンやジャケットなどを重ねましょう。日差しが明るい日は、季節先取りで半袖を着たくなりますが、まだ少し寒いときは半袖の上にダウンベストなどを着ると良いでしょう。

 女性は、冬は厚手のタイツを着用していた人も、春にはストッキング1枚になります。寒い日や寒い時間帯は、ストッキングを2枚重ねたり、薄めの色のタイツを選んだり、パンツルックにするなど工夫してください。

 外出時にはストールやマフラーを持参すると安心です。風が吹いたり、気温や室温が低くて寒ければ、肩から掛けたり、首に巻いたり、膝に掛けたりできます。ストールは、春らしいパステルカラーなら、ファッションに追加することで春らしさを演出でき、さらに暖かく一石二鳥です。

2020年春に寒暖差が身体にこたえる〔つらい〕と感じた割合=同

2020年春に寒暖差が身体にこたえる〔つらい〕と感じた割合=同

 バッグには温熱シートか、小型の使い捨てカイロを入れておくのも良い方法です。体が冷えそうなら、トイレに行ったついでに、そっと貼って温めます。ただし、使い捨てカイロは、やや薄着のこの季節には、やけどをしないように十分注意してください。

 私もこの季節、外出時には3点セットとして「ストール、蒸気温熱シート、ストッキング」をバッグに入れています。ストールはオフホワイトや水色、淡いピンク色などです。ストッキングは寒いときの重ね履き用と、伝線して破れたときの履き替え用を兼ねています。

 夜はそろそろ手軽なシャワー浴だけで済ませる人も増える時期ですが、春は浴槽で心も体も温めてほぐしましょう。好みの香りの入浴剤を選ぶとリラックス効果も倍増、炭酸入り入浴剤なら血行を良くして、より一層の温め効果も期待できます。

 今年の春は、1年間の自粛生活から活動が広がるので、スケジュール的に無理をしないことが大事です。屋外の明るさに惑わされて、冬に比べて、つい仕事の終わりが遅くなりがちです。そうなると帰宅も遅くなり、就寝時刻も遅くなります。朝は冬より早く明るくなるので、早めに目が覚めます。睡眠時間が短くならないために、夕方の過ごし方がポイントになりそうです。

 心身に負担が掛かりやすい春、毎日の暮らしの中で準備や生活改善をして、より気持ちよく、もっと元気に過ごしたいですね。「春バテ」と思われる症状でも、あまりにも長引くときや、つらいときは体の病気やメンタル疾患の疑いもあります。症状に合わせた医療機関を受診することをお勧めいたします。(了)

福田千晶氏

福田千晶氏

 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶應義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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