治療・予防

男女とも急増する梅毒
早期治療で感染拡大防ぐ

 梅毒はかつて世界中で流行し、ペニシリンによる治療が確立して以降も各国で再流行がみられている感染症だ。日本では長く報告数が横ばいで推移してきたが、「2010年ごろから男性、2013年からは女性の患者数が増えています」と、東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)皮膚科の石地尚興教授は説明する。

 梅毒の症状と経過

 梅毒患者の増加は「男性同性間の性的接触による感染に加え、女性患者の増加によるもの」と石地教授。女性は異性間の性的接触による感染が多く、流行地域から来日する外国人による影響も指摘されているが、「明らかな背景は分かっていない」という。

 梅毒は、梅毒トレポネーマが皮膚や粘膜を介して感染するもので、主な感染経路は性的接触だが、母子感染もあり、医療現場での針刺し事故でも起こり得る。

 梅毒には第1~4期まであり、約10年と長い期間の中で症状の出現と消失を繰り返すのが特徴だ。感染後、約3週間の無症状期間を経て第1期の症状である細菌侵入部のしこり、しこりの潰瘍化、リンパ節の腫れが出現するが、「症状は3週間程度で自然に消えてしまいます」と石地教授。

 しかし放置していると、約3カ月後には全身にバラの花びらのような色の斑点(バラ疹)、外陰部などに白く隆起した扁平(へんぺい)コンジローマなどができる。「この第2期も自然に消失しますが、治療を受けない場合、無症状性梅毒(潜伏期)に移行します」という。

 ほとんどは第1~2期、あるいは無症状のまま血液検査で発見されるが、放置すると約3年で再び発疹ができて潰瘍化し(第3期)、10年後には大動脈瘤(りゅう)などの心血管疾患や進行まひなどの神経疾患へと至る(第4期)。

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