治療・予防

感じ方が変わる味覚障害
~コロナの初発症状としても(東京女子医科大学病院耳鼻咽喉科 山村幸江准教授)~

 食べ物の味が分からない、甘い物を苦いと感じるなど、味の感じ方に異常を生じる味覚障害。新型コロナウイルス感染症では嗅覚障害とともに特徴的な初発症状として注目された。味覚障害の主な原因や症状について、東京女子医科大学病院(東京都新宿区)耳鼻咽喉科の山村幸江准教授に聞いた。

 ▽症状は三つに分類

 味覚障害は、味自体の感じ方の強弱に異常が生じる「量的な異常」、口の中に何もないのに苦味や塩味を感じたり、甘い物を食べても苦く感じたりするなどの味の「質的な異常」、さらに嗅覚の異常を伴うものの三つの症状に分けられる。

 原因はさまざまで、最も多いのは亜鉛不足によるもの。亜鉛は、味を感じ取るセンサーの役割を担う舌表面の味蕾(みらい)という組織の働きを助ける酵素を活性化する。

 亜鉛不足は、食事から取る量が少なかったり、服用薬や糖尿病、肝臓病などの持病の影響で吸収が妨げられたり、排出されやすくなったりすることが原因だ。「亜鉛不足による味覚障害には、亜鉛を補充する治療を行います。多くは月単位での治療が必要です。サプリメントでは十分な量を補うことはできません」と山村准教授は話す。

 風邪やインフルエンザの後にも味覚障害を生じることがある。その多くは、味覚は正常で嗅覚が侵された「風味障害」だが、コロナ感染により嗅覚だけでなく味覚が損なわれるケースもある。メカニズムは不明で、2週間程度で回復することが多いが、数カ月残るケースもある。

 ▽ストレスも原因に

 近年、増えているのが心因性の味覚障害。「ストレスがかかる環境での食事で味が感じられないなど、味覚はその人の心の状態に大きく左右されます」

 心因性の場合は、心療内科や精神科での治療も必要となる。「心因性味覚障害は、ストレス因子が排除されない限り、治すことが難しいと言えます」と山村准教授。原因を突き止め、じっくりと治療することが重要だ。

 「味覚障害は、発症から半年を過ぎると治りにくくなります。味覚がおかしいと感じたら、できるだけ早く地域の耳鼻咽喉科を受診して治療を始めてください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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