Dr.純子のメディカルサロン

あなたの会社がやっているかもしれない、やる気が出ない理由とは?
~仕事がきつ過ぎても楽過ぎても駄目~

 仕事が緩過ぎる会社が嫌になり、若者が退職するという報道が話題になりました。業務を楽にしたら長続きするだろうとの考えがマイナスの結果を生んだわけです。気持ちよく長続きする働き方をするには何が必要なのか。「激務は嫌だが楽過ぎるのも駄目」ならどうすればいいのか。こう悩む上司は「エンゲージメント」について知っていただきたいと思います。

(文 海原純子)

 気持ちよく働き、やる気を保つにはエンゲージメントが大事で、ポイントは二つあります。

入社式に臨む新入社員。配属先で生き生きと働けるか?

入社式に臨む新入社員。配属先で生き生きと働けるか?

 ◇ポイント① 業務難易度と能力のバランス

 ・業務の難易度<自分の能力
 あまりにやさしく何の努力もせずにできてしまう業務ばかりだと、退屈してモチベーションが低下し無気力になる。

 ・業務の難易度>自分の能力
 難し過ぎる業務や量が多過ぎると不安になり、心配でストレスとなり嫌になる。

 ・業務の難易度≧自分の能力
 努力するとできる場合、達成感が得られてモチベーションが上がりエンゲージメントが成立する。このときすぐにフィードバックが得られると、さらにエンゲージメントが上昇する。

 ウェルビーイング経営には、その社員の能力と業務の難易度を把握し、努力すれば達成できて自分の進歩が感じられるような業務をしてもらうことが大事と言えます。

 ◇ポイント② 裁量権の有無

 産業ストレスの専門家カラセック氏は、職業性ストレスは「仕事の要求度」と「仕事のコントロール感(裁量権)」の組み合わせによって構成されると考察しました。何でも上司の指示で決められていて、自分のペースで仕事が進められないと嫌気が差してしまうという声を聞くことがあると思います。

自分の裁量権がない業務は負担感が高い

自分の裁量権がない業務は負担感が高い

 ・低要求度+高コントロール
 自分のペースで仕事ができ、しかも業務は負荷が低い。新入社員や復職後などはこうしたスタイルが望ましい。

 ・高要求度+高コントロール
 仕事は負荷が高いが、自分のペースで仕事ができる。企業のCEOや上層部、研究職などは忙しくても裁量権があるのでエンゲージメントが保てる。

 ・低要求度+低コントロール
 業務負荷は低いが、自分のペースで進められない。負荷は低くても裁量権がないのでうんざりしやすい。

 ・高要求度+低コントロール
 自分のペースで仕事が進められず、しかも業務の負担が大きい。例えば救急隊員や消防署員などはストレスが高く消耗しやすい。

 気持ちよく働くためには、業務の裁量権がどのくらいあるかがポイントになります。自分のペースで業務を進められる場合、負荷が増えてもやる気を保つことができるのですが、そうでない場合は疲労感が増して燃え尽きやすくなります。

 企業のCEOは「自分はこんなに忙しく飛び回り夜も仕事をしているのに、部下はすぐ休みたがる」などと言います。しかし、CEOは自分のペースで仕事をし、思いついたときに部下に指示できます。裁量権があるから疲労度は部下とは違うのです。

 業務のコントロール度を考えながらどうしても自分のペースで仕事ができない職種の場合は、きちんと時間を管理して休息を取りながら業務ができるような体制をつくることが必要と言えます。(了)

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