Dr.純子のメディカルサロン

部下の「いつもと違う」を見逃さないで
~うつや体調不良のサインに気付くコツ~

 部下の「いつもと違う」に素早く気が付く自信がありますか?
「よく話しているから大丈夫」。そんな自信がある方は特に気を付ける必要があります。

(文 海原純子)

リモートワークが続くと部下の「サイン」に気付きにくい

 ◇上司の前では元気なふり

 ストレスチェックで高ストレスを指摘されて私の所へ面談に来られた方は、かなりのうつ状態で受診と治療が必要な状態でした。ところが、その方の上司に聞くと、「いや、今朝も会いましたが、元気そうでしたよ」とのこと。

 「分かってない」と思いました。上司に会ったら、元気そうなふりをする部下は多いのです。部下の「いつもと違う」を早めに見つけ、メンタルケアにつないでほしいと思うことがしばしば。部下の「いつもと違う」を早めに見つけるにはどうすればいいかを考えたいと思います。

 ◇管理職に気付いてほしい3項目

 1 部下は上司に「メンタルが弱い」と思われたくない
 上司には「弱い人間」だと思われたくない、悪く思われたくない、というのは部下に共通した心理です。弱いやつと思われたら、その後のステップアップに傷が付いてしまう、ダメなやつと思われたらもう終わり。そうした思いから、体調が悪くても大丈夫なふりをしたり、業務が過剰でかなり無理をしていても顔に出さないようにしたりすることが多いのです。特に体調が悪くなるほど明るく振る舞ったりする人もいるということを覚えておいていただきたいと思います。

 2 遅刻やミスが増えていないか?
 リモート会議に遅れる。遅刻やスケジュールの忘れなど不注意によるミスが多い。これらは、うつのサインのときがあります。特に朝の会議に遅れる場合は要注意です。うつ症状やうつ病の場合、朝起きるのがつらく、おっくうになります。午後から夕方はよくなるのですが、朝がだるいのが特徴です。夕方は元気だから、朝起きられないのは気が緩んでいるのだろうなどと思わずに、体調確認や声掛けが必要です。

 3 仕事の遅れはうつのサインかも
 うつに陥ると、「決められない」という状況が起こります。ああしようか、こうしようかと思考が定まらず、どうしていいか分からない状態に陥ります。ですから業務について決定できなくなり、あれこれ思い悩むために仕事がストップしてしまいます。結果として、仕事が積み残されてしまう、ということになります。仕事の積み残しを周りから指摘されることで、さらに気持ちが落ち込む状況に追い込まれる前に、仕事の遅れにうつが隠されていることに気が付き治療につなぐことが大切です。

 ◇リモートでも見逃さないでほしいサイン

 1 身だしなみはどうか
 いつもきちんとしている人が何となくだらしない感じがする。いつもセンスがいいのに雰囲気が違う。また、髪が乱れがちだったり、女性で化粧がいつもと違ったりして違和感がある場合も注意が必要です。うつ状態になるとだるくて何事にもおっくうになるので、服装など身だしなみに配慮するゆとりがなくなります。

 2 顔色の変化
 リモートワーク中の同僚の顔色が赤いなあと気が付いて声掛けした社員がいます。画面越しなのでカメラや照明などの関係で赤いのかなあと思ったそうですが、コロナ禍の前は、その同僚と仕事後に飲んでいたことを思い出し、心配になり声掛けしてみました。そこで初めて昼間からアルコールを飲んでいてやめられなくなっていたことが分かり、受診につなげました。顔色については相手に聞きにくい内容ですが、この人たちの場合は普段からコミュニケーションが良かったので本音で話ができたと言えます。

 3 1人暮らし・単身赴任・入社1年目、2年目のリスク
 リモートが増えると仕事を一日中引きずり、仕事時間と休憩時間のメリハリがなくなり、結果として生活リズムが乱れて、それに引き続き体調不良やうつ状態に陥る人がいます。特に1人暮らしや単身赴任の社員は、身近に家族がいないことで自由に時間を使える一方で、生活リズムの乱れも起こしやすいと言えます。

 また、入社1年目、2年目の社員は、仕事にまだ慣れていないうちからリモートが続いて社内の人間関係も構築されていないため、分からないことがあっても質問しにくく、誰にどのくらいの頻度で聞いていいか分からない、などのストレスを抱えています。こうしたリスクが高い社員の生活リズムが無事かどうかは、リモート会議を始める前に雑談タイムなどを作り、話を聞いて必要なサポートをすることが大事です。

アドバイスする前に部下の話を聞く

 ◇部下の「いつもと違う」に気が付いたら

 1 Open Question の声掛け
 部下のいつもと違うに気が付いたら、まず声掛けです。その際は「Open Question」をしてください。Open Questionとは、「Yes」「No」で答えられない質問です。よくありがちな声掛けは、「元気でやってるか?」「大丈夫か?」「忙しくないか?」などというものです。でもこの質問をされても部下は、元気ではないです、とは言いにくいですね。つい、「大丈夫です」と答えるでしょう。

 ですから、「はい」「いいえ」で答えられない質問にします。例えば、「この頃毎日気温が変わるし、花粉も飛んで身体がついていけない感じがするよ。君はどう?」「この頃忙しくて嫌になるねえ。君はどうなの?」などです。こうして声掛けすると、単に体調確認だけでなくコミュニケーションを築くことにつながります。

 2 アドバイスの前に「まず聞く」
 部下の話を聞く機会を作り、体調についてや、業務の量と質、仕事の進め方などで負担がないかについて話し合ってください。その際、まず部下の話を聞く、まずは状況確認をすることが必要です。

 管理職はしばしば、話を全部聞く前にアドバイスをしようとするものです。「こうすればいいじゃないか」「そんなふうに考える必要はない」と言いたくなるはずですが、アドバイスはひとまず後にして、まず話を聞く体制を取ります。部下の気持ちをまず把握した後に、必要ならアドバイスなどを伝えたり受診を勧めたりしてください。

 部下の立場や気持ちを想像することができる管理職は少ないので、そうした管理職が増えることは企業のメンタルヘルス対策として重要だと思います。うつの症状を起こす人の多くは過剰適応して我慢し、気持ちを抑え込んでいることが多いので、自分の気持ちや悩みを話すことができると気持ちが軽くなるはずです。

 ◇本音を話せる管理職に

 うつや体調の悪い社員のサインに早めに気が付き支援につなぐことは、社員本人はもちろんですが、企業にとっても大事なことです。それが遅れがちになるのは、体調が悪くても言い出せない、メンタルが悪いとレッテルを貼られたら、もうその後、上には行けないと考えて体調の悪さを隠してしまう人が多いからと言えます。

 体調が悪くなりかけたとき、もし安心してそのことを伝えられる上司がいて業務の量を軽減するなどの対策を取れば、うつを未然に予防できることができる場合もあるはずです。普段から話をしやすい管理職がいる職場では、休職者も少ないと言えます。部下に元気そうなふりをされてしまう管理職ではなく、部下が本音を話せる管理職であってほしいものです。(了)

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