女性医師のキャリア
自己犠牲をやめたら人生が好転
~女性医師が伝えたい幸せの法則~ 女性医師のキャリア 医学生インタビュー
◇一番大切なのは医療者が幸せに働くこと
訪問診療を行い、住み慣れた地域で安心して暮らすためのサポートを大切にしている
スタッフには、「とにかく自分が幸せだと思えるように働いてください」と伝えています。誰でも意見が言え、主体的に働ける職場の雰囲気づくりを心掛けています。スタッフからは「こういうアプローチをしたら患者さんにプラスになるのではないか」「ケアマネジャーさんに相談してみたらどうか」「患者さんを地域に出してみよう」など、活発な意見が出るようになりました。「トップダウン形式で言われたことだけをやってくれればいい」という医師もいますが、私の場合はみんなに助けてもらっているので、診療内容や患者さんに対する態度、働き方について、彼らが日頃から思ったり考えたりしていることを客観的に教えてもらえるのは大変貴重なのです。
◇「社会的処方」で経営の立て直しにも成功
患者さんに対しては、過剰に検査・治療したり、薬を処方したりするだけの医療ではなく、しっかりと話を聞き、社会参加を促して生きがいにつなげる「社会的処方」を積極的に行っています。コロナ禍では相談する相手がいなくて孤立し、不安を抱えていた患者さんも多く、話を聞いてあげるだけでも安心感が得られたようです。スタッフの接し方も変わり、患者さんの満足度が上がったことが口コミで広がり、新規の患者数は増え続けています。実は、所長就任当初は多額の累積赤字を抱えていたのですが、患者数が増えたことで黒字に転換できました。過剰な治療や無駄な投薬をしなくても、医療者が楽しく働くことで患者さんも元気になり、経営を立て直せたのです。
地域に毎月配布している「診療所だより」に毎回コラム掲載
私自身、診療所の仕事が自分には合っていて、毎日が楽しいと思うようになった頃、主任看護師から「看護師の仕事というのは、つらいと思いながら働き続けるものだとずっと思ってきました。実はこんなに楽しい仕事だったんですね」と言われた時はうれしくて、自分自身が無理のない働き方を選択して本当に良かったと思いました。
◇自分を大切にして幸せのループを広げる
女性の場合、仕事を覚えて一人前になる時期と妊娠適齢期が重なっています。また適齢期であってもすぐに妊娠できる人ばかりではありません。私は生理が重かったので、治療のためにピルを服用していましたが、月経困難症は子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などの病気が原因となっていることも少なくありません。子供を持つか持たないかにかかわらず、自分の体を守れるのは自分しかいません。自分の心や体の声に耳を傾けてみる。そうやって自分の心と体を大切にして、まずは自分自身が幸せになることを考える。そうすることで幸せのループが広がっていくのではないでしょうか。(了)
聞き手:白川礁(帝京大学医学部6年)、水野由麻(東京医科歯科大学3年)、文:稲垣麻里子、企画:河野恵美子(大阪医科薬科大学医師)
藤田亜紀子医師プロフィル
1979年生まれ。2005年岐阜大学医学部卒。認定内科医、総合内科専門医、消化器病専門医、肝臓専門医、産業医を取得。総合病院、老人保健施設管理者、訪問診療専門クリニックを経て2020年8月から桃山診療所所長
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(2023/03/07 05:00)
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