治療・予防

食品が媒介する寄生虫症=肉、魚はよく焼き、しっかり火を

 寄生虫は、普段私たちが食べている生鮮魚介類にもいることがあり、生きたまま食べると腹痛や下痢を引き起こす恐れがある。寄生虫による食中毒の予防のポイントについて、杏林大学医学部感染症学講座(東京都三鷹市)の小林富美恵教授に聞いた。

 ◇鮮度の良さがリスク

 寄生虫には、多数の細胞から成り、目視できる「蠕虫(ぜんちゅう)」と、一つの細胞から成る目視できない「原虫」がいる。蠕虫で国内の感染者が多いのが「日本海裂頭条虫(にほんかいれっとうじょうちゅう)」やアニサキスで、幼虫が魚介類の筋肉に入り込んでいたり、内臓表面にいたりすることがある。

 日本海裂頭条虫は1~2センチの幼虫がマスやサケに寄生している。それらを生きたまま食べると、小腸上部で10メートルに達するほど成長。排便時に肛門から成虫の一部が垂れ下がり、発見に至るケースが多い。アニサキスはサバずし、イカの生食などでの感染者が多く、突然強い腹痛に襲われる。

 原虫に関しては、「ヒラメの刺し身を食べて腹痛や下痢に見舞われる『謎の食中毒』の原因が、最近になってクドア(粘液胞子虫)であることが分かりました」と、小林教授は話す。

 冷蔵保存と輸送の技術が進んだことで、鮮度の良い魚がすし店や小売店に並ぶ。一方、寄生虫が生きたまま口に入る機会も増えており、生肉や生魚はよく焼いてしっかり火を通す必要がある。また、マイナス20度以下で48時間以上冷凍しても、多くの寄生虫は死滅する。

 ◇渡航時の予防対策

 原虫の感染症で増加傾向にあるのが性感染症赤痢アメーバ症だ。赤痢アメーバが経口感染して発症し、腸管から全身に回り、特に肝臓で増殖して膿瘍(のうよう)ができる。男性の同性愛者に多く、他のパートナーに感染してまん延するケースも多い。

 海外での寄生虫感染例では、汚染された水やその水で洗った生野菜の飲食、寄生虫を持つ蚊などに刺されるマラリア、貝類のいる湖沼を泳いで皮膚から感染する住血吸虫などがある。

 特に、衛生環境が悪い地域に渡航予定の人は、①渡航者外来などを受診して指導を受ける②スプレータイプの虫よけ薬を持っていく③白っぽい長袖、長ズボンを履いて肌を露出しない④湖沼で泳がない⑤生水、生野菜を口にしない―などの対策が重要だ。

 「帰国後に体調が悪いと感じたら、寄生虫症の感染も疑って病院を受診してください」と、小林教授はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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