治療・予防

歯磨き不足、肺炎リスク上昇と関連
~1日1回以下で増加(東京医科歯科大学 相田潤教授ら)~

 肺炎球菌ワクチンを接種していない高齢者で、1日の歯磨き回数が少ないほど肺炎のリスクが高くなるとの研究成果が9月、発表された。研究を行った東京医科歯科大学(東京都文京区)健康推進歯学分野の相田潤教授、井上裕子特任研究員に話を聞いた。

歯磨き回数と肺炎罹患の割合

歯磨き回数と肺炎罹患の割合

 ◇専門的ケアの効果あり

 肺炎予防策として、主な原因菌である肺炎球菌ワクチンの定期接種が2014年から高齢者を対象に行われているが、努力義務ではない。

 こうした中、注目されている予防策の一つが口腔(こうくう)ケアだ。相田教授によると、世界の主な臨床試験をまとめた研究で、歯科スタッフによる専門的な口腔ケアは個人によるケアに比べ、肺炎のリスクを35%低下させると報告されている。日本の要介護高齢者を対象とした研究によると、専門的な口腔ケアは非専門的なケアに比べ、2年間の肺炎発生率を約4割低下させた。

 ◇口内細菌で肺炎抑制

 日常的な歯磨きは、肺炎予防にどの程度効果があるのだろうか。相田教授らは、要介護認定を受けていない高齢者1万7217人(平均年齢73.4歳)を対象に、1日に行う歯磨きの回数と過去1年間における肺炎の発症との関係について、肺炎球菌ワクチン接種の有無に分けて検討した。過去5年以内にワクチンを接種した人は43%、接種していない人は57%だった。

 ワクチンを接種した人で肺炎を経験した割合は、1日の歯磨き回数が3回以上のグループで4.4%、2回で4.7%、1回以下で4.5%と、3グループ間でほとんど差がなかった。

 一方、ワクチン非接種ではそれぞれ3.5%、4.5%、5.3%と、歯磨き回数が少ないほど肺炎になった割合が高く、回数と肺炎との間に統計学的に明らかな関係が認められた。1日1回以下の人は3回以上と比較して、肺炎のリスクが有意に高かった。

 相田教授は「ワクチンを接種していない高齢者は免疫力が弱く、口の中にいる細菌で肺炎を起こす可能性が高まります。そのため、歯磨き回数が多いと、そのリスクが低下すると考えられます。ワクチン接種を勧めますが、接種できない人は歯磨きを十分行うことが重要です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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