治療・予防

ぜんそく児の旅行
~準備が肝心(群馬大学大学院 滝沢琢己教授)~

 行楽シーズンを前に、家族旅行を計画する家庭も少なくないだろう。旅は子どもがさまざまな経験をする機会だが、ぜんそくのある子どもにとっては、旅先で突発的な発作が起こるリスクが潜んでいる。ぜんそく児と家族が旅を楽しいイベントにするためのポイントを群馬大学大学院(前橋市)小児科学分野の滝沢琢己教授に聞いた。

旅行を楽しむポイント

旅行を楽しむポイント

 ◇薬の備えを万全に

 空気の通り道である気道が何らかの刺激によって狭くなり、呼吸が苦しくなる状態を繰り返す「ぜんそく」。特に息を吐く際に、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という特徴的な音が生じる。普段は薬で状態が安定していても、旅行中の環境の変化や気象条件、宿泊先のダニやカビ、ほこりなどのアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)、体力の消耗により発作が起きる可能性がある。

 「子どもが安心して旅を楽しむためには、事前準備が大切です」と滝沢教授。旅行前は風邪などを引かないように体調を整え、旅行中に発作が起こったときの治療薬をあらかじめ主治医に処方してもらい、具体的な対処法を相談しておく点が重要だ。「旅行中も日常の服薬の継続が基本ですが、主治医の判断で、旅行前に薬を予防的に少し増やす場合があります。普段と異なる吸入器を持参する際は、事前に使用して慣れておきましょう」

 また、旅行先で受診可能な医療機関をあらかじめ探しておく。海外旅行の場合は、英語の診断書や治療薬の証明書を主治医に書いてもらい、持参すると安心だ。「旅先ではさまざまな刺激があります。子どもが疲れないよう、ゆとりのある旅行計画を心掛けましょう」

 ◇発作時も慌てず対応

 ぜんそく児にとって、たばこや花火、キャンプファイアなど、煙が発生している場所は発作を誘発しやすいので、できるだけ近づかないといった配慮が必要だ。また、旅行中も睡眠を十分取り、普段通りの規則正しい生活を心掛けることが、発作の予防につながる。

 もし発作が起こっても、保護者は慌てずに子どもの様子をよく観察し、主治医に指示された対処法を速やかに実践する。「発作の程度が軽ければ、発作治療薬を服用すれば20分程度で効いてきます。効果がない場合や、『元気がない』『食欲がない』『しゃべらない』といった兆候があったときは、医療機関を受診してください」

 疲労から旅行後に発作が起きやすくなるケースもある。帰宅後、しばらくは無理をさせず、薬をしっかり飲んで体調を整えるとよい。

 「日ごろの服薬をしっかり守り、事前準備を万全にすれば、旅行は十分可能です。家族で旅を楽しんでください」と滝沢教授は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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