治療・予防

握った力、弱めにくく
~筋強直性ジストロフィー(山口大学医学部付属病院 中森雅之教授)~

 遺伝子変異が原因で筋肉が痩せて筋力が弱まる筋ジストロフィー。幾つかのタイプがあるが、最も多いのは「筋強直(きんきょうちょく)性ジストロフィー」だ。山口大学医学部付属病院(山口県宇部市)脳神経内科の中森雅之教授は「一度力が入った筋力を緩めにくい症状が特徴です」と説明する。

手を握った後、手指がこわばる

手を握った後、手指がこわばる

 ◇手指がこわばり

 筋強直の症状は「例えば、電車やバスのつり革を握った後、手指がこわばってしまい、開きづらくなります」。病気が進行して筋力が弱まると握力自体が低下する他、筋肉が関わっている呼吸や飲み込みの障害も生じる。全身の筋力低下で寝たきりになる可能性も。

 もう一つの特徴は、心臓の不整脈糖尿病、高コレステロール血症、白内障、それに認知症のような症状など、さまざまな合併症があることだ。

「変異遺伝子からできた異常なリボ核酸(RNA)が、体の中の大事なタンパク質を絡め取ってしまいます。タンパク質が本来の機能を果たせないため、筋肉をはじめ、さまざまな臓器に障害が表れます」

 患者は、人口10万人当たり2.7~5.8人の割合と推定される。「生まれた時に筋力低下があるケースから、成人後に発症し、軽い筋強直にとどまるケースまでさまざまです」

 今のところ、筋肉の症状を改善する治療はない。病状の進行に応じて人工呼吸器などで管理することや、合併症の発生を早期に把握して治療することが主眼となる。

 ◇新たな治療法開発

 中森教授らは治療法の研究で、患者の同意を得て既存の抗菌薬エリスロマイシンを内服してもらった。その結果、異常RNAの働きを阻害して筋肉の障害を改善できることと、その安全性を確認した。「抗菌薬は細菌のRNAに結合するものが多いことに着目しました」

 エリスロマイシンを治療に使う有効性と安全性について、現時点で大規模な研究では証明されていない。そのため中森教授らはさらに試験を行う予定で、「正式に使えるようになるまで、患者さんは自己判断で飲まないようにしてください」と話す。

 その上で「定期的に診察を受け、呼吸機能の障害や心臓などの合併症の早期発見・治療に努めましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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