治療・予防

ノロノロ血流で脳梗塞・心筋梗塞に
~若年層でも増加、食生活の乱れ原因~

 脳梗塞や心筋梗塞は以前、高齢者の病気というイメージが強かった。しかし、近年は30~40代でも増えているという。徳島大学大学院の佐田政隆教授(循環器内科学)は血管の中をスムーズに流れない「ノロノロ血流」が問題だとした上で、「偏った食生活が原因の一つだ」と警鐘を鳴らす。

ノロノロ血流の一因は偏った食生活=写真はイメージ

ノロノロ血流の一因は偏った食生活=写真はイメージ

 血液は速く流れると詰まることはない。血管が細くなったり、硬くなったりすると血液がドロドロになり、詰まりやすくなる。ドロドロの血液は粘稠(ねんちゅう)度が高く、血管内をゆっくりと流れる。佐田教授は「ノロノロ血流になると、血栓ができやすくなる」と話す。

 大量の汗をかいたりして水分が足りなくなると、血液が濃縮してドロドロに固まりやすくなる。生活習慣病である肥満が健康に悪いことは知られているが、外見が痩せている人でもコレステロールや中性脂肪が多いと、動脈硬化のリスクが高まる。

悪玉コレステロールが血液の流れを悪くする

悪玉コレステロールが血液の流れを悪くする

 ◇血管年齢を知る

 悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールは血管の壁に付着する性質があり、これが増えると血液の流れを妨げる。さらに活性酸素によって酸化LDLコレステロールに変化するとマクロファージと呼ばれる白血球が異物として攻撃し、炎症を起こす。その結果、おできのようなプラークができ、血管が狭くなって血液の流れが悪くなる。

 血管年齢というものがある。「皮膚と同じで赤ちゃんの皮膚は柔らかくてすべすべしているが、年を取ると硬くなり、ゴワゴワしてくる。血管も若い時はしなやかで血液がスムーズに流れるが、加齢で血管は硬くなるとしなやかさが失われ、血液の流れは悪くなる」。血管年齢を測ることは難しくはない。佐田教授は「40代なのに70代の血管の人もいれば、逆に80代で50代の血管を保っている人もいる」と言う。

 日本血管不全学会が推奨しているのが、血管の収縮・拡張を調整する血管内皮の機能を調べるFMD検査だ。動脈硬化が引き起こすさまざまな疾患に対する早期の発見と治療に有効だ。

佐田政隆・徳島大学大学院教授

佐田政隆・徳島大学大学院教授

 ◇背景に食の欧米化

 動物性の脂質や炭水化物を中心とした偏った食事は、ノロノロ血液の原因となる。脂質は三大栄養素の一つだが、動物性脂肪の取り過ぎは良くない。例えば、日本人の病気による死亡率はがんがトップだが、動物性脂肪を含む食べ物を好む米国人では心筋梗塞が第1位となっている。佐田教授は「ここ20年くらい、40代の心筋梗塞や脳梗塞の患者が増えている。日本人の食事の欧米化と軌を一にしているのではないか」と推測する。

 北極海と北大西洋の間に位置するグリーンランド(デンマーク領)で暮らすイヌイットは、アザラシの肉や魚を食べている。脂質であっても血液への負担が少なく、血液はサラサラだ。一方、米国や日本のファストフード店でハンバーガーを食べ過ぎれば、メタボになる。佐田教授は「より注意したいのは、フライドポテトに使われる油だ。『オメガ6脂肪酸』が含まれ、過剰摂取は動脈硬化を引き起こしやすい」と話す。

 ◇オメガ3脂肪酸の効果

 佐田教授は、脂質について「オメガ3脂肪酸」を勧める。オメガ3にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などがある。オメガ3脂肪酸は不飽和脂肪酸といわれ、血液をサラサラにする効果もある。

 オメガ3脂肪酸はアジやサバ、イワシなどの青魚に多く含まれている。しかし、毎日青魚ばかり食べるのは難しい。そこで、えごま油やアマニ油などを活用したい。目安は1日に小さじ1杯程度。ヨーグルトやサラダ、冷ややっこなどにそのままかける。もちろん、オメガ3脂肪酸だけを気にするのではなく、バランスが良い食事を心掛けたい。(鈴木豊)

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