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多汗症のピーク時予測した「前線」
~受診の目安に、早めの治療を~

多汗症について説明する室田教授(4月9日、東京都新宿区)

多汗症について説明する室田教授(4月9日、東京都新宿区)

 ◇10人に1人が発症

 多汗症は、手の汗で紙がぬれて書けない、スマホのタッチパネルが反応しない、汗染みが気になって好きな色の服が着られない-など日常生活に支障を来すほど過剰な汗が出るが、病気の認知度も低いため、汗っかきな体質と諦める人も多く、恥ずかしさで受診をためらう人もいる。日本皮膚科学会のガイドラインでは、発症は10人に1人と推計。少なくない割合だが、受診率は4.6%と低い。

 ガイドラインによると、原因不明の過剰な発汗が体の一部に6カ月以上持続して認められ、①発症が25歳以下②左右対称に汗が出る③睡眠中は汗が止まる④週1回以上、汗で困る⑤家族歴がある⑥日常生活に支障を来す―の6項目のうち2項目以上が当てはまる場合、原発性多汗症と診断される。

 治療法は増えていて、わき汗には、発汗を抑える抗コリン薬の塗り薬と拭き取りタイプが処方される。重症になると、ボツリヌス毒素製剤を注射する。ほかには、わきだけでなく、手や足裏、頭などにも使える、汗の出口をふさぐ塩化アルミニウム液にも効果がある。これらは塩化アルミニウム液を除き、保険適用となる。

多汗症前線の発表後、写真撮影に臨む(左から)科研製薬の深山浩さん、室田教授、天達さん、黒沢さん

多汗症前線の発表後、写真撮影に臨む(左から)科研製薬の深山浩さん、室田教授、天達さん、黒沢さん

 ◇前線で受診向上に期待

 長崎大大学院の室田浩之教授(皮膚病態学)は「汗によって生活の質や日常生活に影響を受けている人は多いので、前線をきっかけに受診してもらえれば」と話した。既に汗で悩んでいる人には、「症状が悪化すると流れるほどの汗をかくため、塗った薬が流れてしまう。そうした新たな悩みも出てくるので、汗が多いと思ったら、さらに多くなる前に相談してほしい」と呼び掛けた。

 気象予報士の天達武史さんは、多汗症患者数の増加と密接に関係している夏の最低気温は近年、上昇の傾向があると指摘。今年の夏については「前倒し猛暑」との予測を示し、「多汗症前線は6月からスタートするが、その前から気をつけてもらいたい」と注意を促した。

 自身も長年患者で、NPO法人「多汗症サポートグループ」の代表理事を務める黒沢希(くろさわ・のぞみ)さんは、前線の発表を「まさに待っていた」と評価。「多汗症の患者は、いつも汗をかいているので、いまひとつ受診のタイミングが分からない。前線は、時期が来たので病院に行ってみようといった後押しになる」と話した。(及川彩)


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