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気になる脇汗・におい、対策は
悩みに合った制汗剤選びがポイント

 高温多湿の季節になると、汗によるべたつきやにおいが気になる。特に脇汗の、においと服の汗染みに悩むことも少なくないが、抑えたり軽減したりすることはできるそう。専門家は「市販の制汗剤も有効。改善しなければ皮膚科医に相談してほしい」と話す。

 ◇においの原因は菌

 汗は、主に体温調節の役割を担っている。高温の環境でも全身から出た汗が蒸発し、その時の気化熱が適切な体温まで下げるため、人間は活動を続けることができる。2種類ある汗腺のうち、主にエクリン腺から分泌される汗がこの役割を果たす。

 もう一つのアポクリン腺から出る汗は、タンパク質や脂質を含み、べとべとした感触。不快なにおいが生じるのは、こちらのタイプの汗だ。緊張や不安、興奮に反応して分泌される。

 汗は本来、無臭にもかかわらず、なぜにおうのか。原因について、渋谷スクランブル皮膚科の下方征院長は「皮膚の表面や毛穴の中にいる常在菌が、アポクリン腺から出た汗を分解し、脂肪酸などのにおいが強い成分に変えてしまう」と解説する。

 アポクリン腺が股やへその下、特に脇に集中していることから、特有のにおいが強まると、わきが(腋臭症=えきしゅうしょう=)として皮膚の疾病になる。ケアせず放置すると、発汗量が少なくてもにおいが出る。

 ◇耳あかでチェック

 まず、自分の汗がにおいを出しているのかどうか。下方院長は「家族に聞くのも気が引けるなら、耳あかを見てみて。アポクリン腺の汗は外耳道でも分泌される。その量が多い人の耳あかは湿っていて、汗のにおいが強い可能性がある」と話す。

 白い下着の脇部分が黄色みを帯びてくる人も、アポクリン汗が多いと言える。また、遺伝することもある。

 ◇制汗剤選びのポイント

制汗剤選びは自分の悩みに合った成分か、生活に取り入れやすいかがポイント

制汗剤選びは自分の悩みに合った成分か、生活に取り入れやすいかがポイント

 下方院長は「脇の汗は、ある程度コントロール可能」と言うが、体温調節という重要な働きを抑えていいのか。

 人間の体は、汗をかく部位に順番がある。体温が上がり始めると、最初に脇が36度半ばで発汗し始める。「治療で脇汗を止めて、体に悪影響が出ないかという質問をよく受けるが、着衣に染みた汗は蒸発しないため体温調節の役割を果たさず、不快なだけ。余分な汗を止めることに問題はない。脇は、面積が小さい割に最もケアが必要と言える」(下方院長)。

 汗を簡単に抑える方法は、市販の制汗剤の使用だ。血管を収縮させる働きを持つミョウバンが成分として含まれている製品は、汗腺を狭めるため汗が出にくくなる。ミョウバンは殺菌作用もあり、においのコントロールにも有効だ。

 肌への刺激が気になる場合は、メントールが処方されていない物がいい。

 スプレータイプ、ロールオンタイプ、直接塗るタイプなど、最近は剤形もさまざま。手指を汚さず手軽に使え、サラサラした使用感が好みならスプレー。においの原因菌に有効成分をしっかり届けたいなら、じかに塗るジェルやクリームがお薦めだ。下方院長は「自分の悩みやライフスタイルに合わせて選ぶのがポイント」とアドバイスする。

 ◇外出前のシャワーでにおう汗を一掃

 日常生活のちょっとしたことを工夫するだけでも、汗のにおいは抑えられる。一つは、外出前にシャワーを浴びて脇を洗うといい。せっけんを泡立てた柔らかいタオルで脇を洗えば、油汚れのように肌に付いたアポクリン汗を取ることができる。特に洗った後6時間は、においが出にくくなるという。「出かける前に洗うのがポイント。ただし、脇の肌はデリケートなため、優しく洗うことを心掛けてほしい。ゴシゴシ洗うと次第にかゆみが出たり、摩擦による色素沈着で黒ずんだりする」と下方院長。

「汗のにおいや量に対する治療法はさまざまあるが、あまり知られていない。広めていきたい」と下方院長

「汗のにおいや量に対する治療法はさまざまあるが、あまり知られていない。広めていきたい」と下方院長

 また、アルコール含有の汗を拭き取るシートを、小まめに使うのは避けたい。刺激が強すぎて赤みやかゆみ、黒ずみが生じやすい。下方院長は「症状が出始めたら皮膚科を受診してほしい」と強調する。

 気温が高い日は汗もかきやすい。首の後ろや脇を冷やすアイテムを使い、体温の上昇を抑えるのもいい。これからの季節は、熱中症の予防にもなりそうだ。

 ◇皮膚科で症状改善へ

 いろいろな対策をしてみても、汗の量やにおいが気になり悩みが解決しない場合は、皮膚科で相談できる。外用薬、内服薬の処方や、注射で汗腺に直接働き掛ける治療もある。

 脇のほか、頭や手からの汗に悩んでいる人は実は多く、日本人の10人に1人は多汗症であると言われていて、夏場には外出を避けてしまうまで思い詰めてしまうなど生活に支障を来すことも。その一方で、周囲に話しづらく受診をためらう現状があるという。下方院長は「日常生活で困るほどの症状も、改善できる治療法があることを知ってほしい」と呼び掛ける。(柴崎裕加)


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