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「終末期には患者の意思尊重した治療を」 =新肺炎診療ガイドラインを解説―迎寛・長崎大大学院教授

 ◇無理な延命望まぬ患者は「生活の質」優先も

  これまでの肺炎診療ガイドラインは▽市中肺炎(病院外で日常生活をしている人に発症する肺炎)▽医療・介護関連肺炎(医療ケアや介護を受けている人に発症する肺炎)▽院内肺炎(入院48時間以上経過した患者に発症する肺炎)―の3病型ごとにあった。新しいガイドラインはそれらを統一し、診療の流れの単純・明瞭化を図っている。基本的な流れは、診療ガイドラインのイメージのフローチャートの通りだ。

 市中肺炎の場合、医師は、敗血症の有無の判定と重症度の判定を経て、外来で治療を続けるか、一般病棟や集中治療室(ICU)で入院治療するかを決め、治療に使う抗菌薬を選択する。これに対し、院内肺炎や医療・介護関連肺炎の場合は、誤嚥性肺炎のリスクや、終末期かどうかといった評価が治療薬決定の前提になる。

 その評価の結果、誤嚥性肺炎を繰り返しやすい、終末期状態などと判断した場合は、「個人の意思と生活の質を尊重した治療・ケア」を推奨。患者本人が延命措置を望まない場合には、その意思を尊重するよう対応を促している形だ。

 迎教授は「患者本人が延命措置を望まないと聞いていない家族は、『最後まで治療して』と言わざるを得ない。1カ月も2カ月もこうした治療を続けたとき、本人は苦しいだけで家族も疲れてしまう場合がある。事前に家族で終末期の対応を話し合っておくことが大切」と強調する。

 ◇予防が大切、肺炎球菌ワクチン接種を推奨

 健康な高齢者も、肺炎に対する油断は禁物だ。例えば、インフルエンザウイルスに感染すると、免疫力が低下したり、気道の上皮細胞が壊されたりして、肺炎球菌などによる細菌感染も起きやすくなる。何よりも予防が大切だ。

 迎教授によると、1918年からA型インフルエンザウイルスによるスペイン風邪が大流行。全世界で2000万~4000万人、日本でも40万人が死亡したが、犠牲者96人の肺の標本を調べた最近の研究では、9割以上の人が肺炎球菌などによる細菌性肺炎を併発していたという。

 新ガイドラインでは、重要度の高い25項目の医療行為についてクリニカルクエスチョン(CQ=臨床的疑問)を設定、システマチックレビュー(系統的評価)を行った結果を示している。「高齢者の肺炎予防に対して、インフルエンザワクチン肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨されるか」という疑問に対しては、「実施することを強く推奨する」としている。

 65歳になると、肺炎球菌ワクチンは定期接種が受けられる。毎年のインフルエンザワクチンの接種も、もちろん大切だ。こうしたワクチン接種に加え、栄養の偏りをなくし、口腔(こうくう)ケアや禁煙なども日頃から心がけて、肺炎の予防に努め、健康寿命を延ばしたい。

 迎教授は新ガイドラインについて「今後、検証をしながら、よりよいものにしていく必要がある」と話している。(水口郁雄)

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