インタビュー

脳卒中や心筋梗塞の恐れ
糖尿病患者は要注意

糖尿病により心臓や脳の血管にもダメージが生じ、発病リスクが高まる
 糖尿病は確定診断の出た患者も、血糖値が基準値近くの「予備軍」もそれぞれ1000万人を超えたと推定されている。高血糖自体には自覚症状はほとんどないが、進行すれば体中の細い血管が劣化し、網膜や腎臓の機能障害、足などの末梢(まっしょう)部の血行不良を引き起こす。その結果として、失明や壊疽(えそ)による下肢切断など重い障害を招く恐れがあることが知られている。

 ◇太い血管も劣化

 末梢血管だけではない。糖尿病の専門医である順天堂大医学部(東京都文京区)の綿田裕孝教授(糖尿病・内分泌内科)は「糖尿病が進行すると、冠動脈や脳動脈など太い血管にも同様の劣化が生じ、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす確率も高くなる」と話す。糖尿病による動脈硬化が進むと、高血糖やさまざまな糖尿病に伴う代謝異常のために、心臓や脳につながる太い動脈に血液が固まって生じた血栓が詰まり、血流を止めて心臓や脳の細胞が死んでいく。

順天堂大医学部の綿田裕孝教授(糖尿病・内分泌内科)

 末梢血管の障害では少しずつ症状が進行するのに対し、これらの病気はある時点で心臓や脳など、生命に直結する臓器の機能を一気に失わせるような症状が出てしまう。現在は救急医療の進歩により、これらの発作に襲われても一命を取り留める可能性は高くなっているが、脳卒中の場合はまひなどの重い後遺障害が残ることも少なくない。

 この点について綿田教授は「脳梗塞などによる重度の障害が残ってしまうと、糖尿病の治療も大きく制限されてしまう」と指摘する。その結果、糖尿病の治療がうまくいかず、再び脳梗塞を起こしてしまう可能性がある。「脳卒中や心筋梗塞は、失明や人工透析を受けなければならない腎機能障害と同じくらいに怖い糖尿病の合併症だ。このことを、すべての糖尿病患者に対してしっかり伝えることが重要になっている」と力説する。

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