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花粉症対策を受験生も
珍しくない子どもの発症

 毎年春になると、多くの人がスギ花粉に対する免疫の過剰反応から生じるアレルギー性鼻炎に苦しめられる。鼻水や鼻詰まり、目のかゆみだけでなく、睡眠不足や注意力の低下なども生じるので、「鼻風邪のようなもの」と軽視することはできない。特に受験を控えた小中高生は、学習に集中できないだけではなく、面接時の印象に影響してしまう恐れもあるので、できる限りの対策を取りたい。

受験生にとり花粉症は要注意

 ◇眠気催さぬ薬を

 以前は発症まで一定の年月が必要とされていたので、子どもは花粉症にならないといわれた。しかし、アレルギー性鼻炎に詳しい日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の後藤穣准教授は「それは古い知識だ。今は幼児から発症することも珍しくない。当然、治療が必要な子どもも出てくる」と指摘する。対策自体は大人と同じでマスクや眼鏡で花粉との接触を減らす一方、アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬を定期的に服用したり目薬を差したりすることになる。

 「受験生にとって困ることに、市販薬の中には眠気を誘う成分を含んだ薬もあるし、長期間の服用は想定されていない。昨年症状に苦しんだ人は、早いうちに医師の診察を受けて症状に合わせ、眠気をほとんど催さない薬を処方してもらった方がよい」と後藤准教授は勧める。

 アレルギー性鼻炎の原因はスギやヒノキ、ブタクサなど植物の花粉や、屋内に生息する目に見えないくらい小さなダニの死骸などを含んだハウスダストなど多様だ。しかし、春先に症状がひどくなるので「スギ花粉症だ」と思い込んでいる患者やその親が少なくない。後藤准教授は「原因が分かれば、対策も治療法も工夫できるし、症状の持続期間も予想できる。原因物質は血液検査でかなりの部分が判明するので、早めの受診と検査が有効だ」と話す

後藤穣日本医科大学准教授

 ◇体質改善の免疫療法も普及

 花粉が飛散して症状が出る前から服薬を始めていると、症状が軽くなることもある。後藤准教授は「スギ花粉のシーズンだけは、症状が苦しいので市販薬で対処している人も多い。小児や受験生は使える市販薬が少ない上に、薬剤師も慣れておらず、十分なアドバイスをできない場合も想定される」とした上で、「たとえ受験や面接の本番だけは市販の頓服薬で乗り切れても、それまでの勉強の期間の症状は抑えきれない。早めに耳鼻科やアレルギーに詳しい小児科などに相談してほしい」と強調する。

 ここ数年、ごく少量のアレルギー原因物質(アレルゲン)を毎日摂取することで、アレルギー反応を引き起こす体質を改善する「舌下免疫療法」が5歳以上の小児向けにも普及してきたことも、早期治療の有効性を高めている。ただ、花粉症シーズンやその直前に初めても効果が薄く、年単位での治療が必要となるなどの問題点もある。それでも、後藤准教授は「治療効果にも個人差があるが、治療を受けて花粉シーズンにも症状に悩まされない患者も多い」と言う。

 その上で「アレルギー性鼻炎を発病している子どもは、同じアレルギー性の病気であるぜんそくやアトピー性皮膚炎を併発する確率が高くなる。この現象を『アレルギーマーチ』と呼んでいるが、鼻炎段階で免疫反応を正常化できればこの連鎖を止め、ぜんそくやアトピーの発病リスクを下げることも可能なはず。そうすれば大きな効果と言える」と話す。

後藤准教授に診察を受ける中学生

 ◇受験本番に間に合わせる

 舌下治療用の錠剤が登場したことで治療効果や便利性の向上が期待できる。同准教授は「今年から2週間の処方制限がなくなり、長期処方が可能になる。このため治療を受ける人が増える。2020年の受験生は今のうちに検査や診察を受け、今春のスギ花粉のシーズンが終わってから治療を始めると受験本番に間に合うのではないか」とみる。

 気を付けたいのは、治療が終了してからどの程度効果が続くかについて個人差があることだ。花粉の飛散が本格化する前に、血液検査で調べておいた方がいい。検査で血液を調べてスギ花粉やハウスダストのアレルギー反応を示す抗体値を計るとともに、医師による診察や問診が必要となる。

 小学生時代に後藤准教授からこの治療を受けた13歳の男子中学生もそんな一人だ。20年には高校受験を控えているので今の内に治療効果を再確認することにした。「来年の受験にはできるだけ良い状態で臨みたいから」と理由を話したという。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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