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前立腺がんの手術で前立腺を摘出すると、合併症として尿漏れが起こることがある。中には術後1年が経過しても、重度の尿漏れに悩まされる患者もいる。人工尿道括約筋埋込術は、重度の尿漏れに対する唯一の治療法で、2012年から保険適用となった。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)泌尿器・後腹膜腫瘍科の増田均科長は「人工尿道括約筋埋込術は、尿漏れに悩む多くの方に知ってほしい治療法です」と話す。
尿漏れの悩みから解放される可能性も
▽重度の尿漏れが継続
前立腺は男性だけにある臓器で、ぼうこうの下に位置し尿道を取り囲んでいる。前立腺がんの好発部位は、尿道を閉じる役割を果たす括約筋と隣り合わせであり、手術の際はどうしても括約筋を傷つけざるを得ない。そのため、大半の人が術後に尿漏れを経験するが、1年後には約96%が生活に支障のない程度まで回復する。ところが、重度の尿漏れが続く患者も少なくない。尿取りパッドやおむつを1日何枚も使うため、外出を控えたり、仕事に影響したりするという。
増田科長は、前立腺摘出後6カ月の時点で重度の尿漏れがある場合に、人工尿道括約筋埋込術を検討している。「排尿機能は、手術後6カ月までは順調に改善しますが、それ以降は緩やかになり、2年ほどたつと、それ以降の改善はあまり期待できません。こうした術後の経過と人工尿道括約筋埋込術のことを、早い段階で説明します」
▽まずは主治医に相談を
人工尿道括約筋は、圧力調整バルーンとカフ、コントロールポンプから成る。手術で尿道の周りにカフ(バンド)を巻き付け、圧力調整バルーンを腹膜の外に、コントロールポンプは陰嚢(いんのう)に埋め込む。カフ内は生理食塩水で満たされ、尿意を感じて患者が自らコントロールポンプのボタンを数回押すと、生理食塩水が圧力調整バルーンに移動し、尿道が開いて排尿ができる仕組みだ。1~2分後に生理食塩水がカフに戻ると、再び尿道が閉じる。この仕組みを理解し、自身で操作できる重度の尿漏れ患者が、手術の対象となる。「体の中に埋め込むので外からは全く見えません。飛行機の搭乗検査や磁気共鳴画像装置(MRI)も問題ありません」と増田科長。
人工物なので、作動不良や感染症などの不具合が起こる場合がある。また、交通事故や脳梗塞などで救急外来に運ばれたとき、医師が気付かずに尿道にカテーテルを入れ、壊してしまうケースも無いとは言えない。しかし増田科長は「重度の尿漏れ患者にとっては、生活の質を劇的に向上し得る治療法です。まずは主治医に相談してみてください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/04/30 07:00)
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