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高血圧が原因となる病気の一つに腎臓の機能を悪化させる腎硬化症がある。大阪急性期・総合医療センター(大阪市)の腎臓・高血圧内科の林晃正主任部長は「糖尿病、慢性糸球体腎炎に次いで、透析導入の原因となる疾患です」と警鐘を鳴らす。
▽初期には無症状
腎臓は、血液を網目状の糸球体でろ過し、体内で生じた老廃物を尿として排出している。ろ過機能は糸球体に流れる血液の圧力(血圧)によって調節されている。
原因となる高血圧の改善が治療の中心に
腎臓の動脈から糸球体へは細動脈と呼ばれる細い血管が通じているが、長期的に高血圧が続くと細動脈に余分な圧力がかかり、細動脈の壁が分厚くなり内腔が狭くなる細動脈硬化が起こる。細動脈硬化により糸球体に流れてくる血液の量が減少すると、糸球体のろ過量が低下して、腎機能低下の状態になる。腎臓の細胞自体への血液の供給も減少するため、細胞が徐々に死んでゆき、腎臓自体が萎縮する(腎臓の硬化)。
これが腎硬化症だ。症状はほとんどないが、時に高血圧による頭痛などの症状が見られる。腎機能の低下が進行すれば(腎不全)、むくみや貧血の症状が表れ、重症化すると尿毒症が出現し透析療法が必要となる。
林主任部長は「腎硬化症は初期では自覚症状がなく、症状が表れた時には腎臓の硬化がかなり進行しています。また腎硬化症の患者さんは、腎臓以外でも動脈硬化が進行しているため、すでに心筋梗塞や脳梗塞などを合併している、または将来的に起こす危険性が高いので注意が必要です」と指摘する。
▽服薬と生活習慣の改善
腎硬化症の診断には高血圧や心筋梗塞・脳梗塞など動脈硬化による合併症の存在が重要となる。一般にたんぱく尿の存在は腎臓病の初期診断に非常に有用だが、腎硬化症ではたんぱく尿を伴わないこともあり注意が必要だ。血液検査から推算糸球体ろ過量(eGFR)を求め、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排出する能力があるかを調べる。超音波検査で腎臓の萎縮の程度や血流を観察したり、場合によっては腎臓の組織を採取して検査(腎生検)したりすることもある。
治療は、原因となっている高血圧の治療が中心となる。「血圧を下げるために降圧薬を服用しますが、糸球体は血圧の変化に敏感で、急に下げると腎機能が低下することがあるため、慎重なコントロールが必要です」と林主任部長。
適切な血圧を保つには、生活習慣の改善も求められる。「腎硬化症の予防も含め、高血圧の人は塩分の摂取量を控え、適正体重の維持、禁煙を心掛けてください」と林主任部長はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)
(2019/08/23 07:00)
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