治療・予防 2024/12/24 05:00
進行を予測する指標発見
~間質性肺炎の早期治療で(大阪大学大学院 榎本貴俊医師ら)~
10代の女性に発症しやすい摂食障害は、心理的な要因から食の異常を来す疾患だ。「特に痩せの症状が表れる神経性やせ症は治療が遅れると命に関わります。周囲が気付いて、一日も早く専門医に相談してください」と、いずみハートクリニック(神戸市)の泉和秀院長は呼び掛ける。
10代の女性に発症しやすく、治療の遅れが命に関わる
▽認知のゆがみ、低い病識
摂食障害の一つである神経性やせ症は、明らかな低体重が見られ、食事量が極端に減るタイプと、過食後に嘔吐(おうと)や下剤の使用を繰り返すタイプに分けられる。診断基準の一つが体格指数(BMI)18.5未満で、15未満になると最重度となる。本人が体重の減少に満足していることもあり、病気の認識は極めて低い。
一方の神経性過食症では、過食への苦痛から精神科などを受診する例も少なくない。しかし、体重が変化しないこともあり、周囲は気付きにくい。
神経性やせ症の根底には、痩せているのに太っていると強く思い込んでしまうという自身の体形に対するゆがんだ認知があるという。また、食事量の変化だけでなく、物を食べる順番や食べる食材などに対して強いこだわりを見せるようになる。抑うつ症状を合併していることが多く、自傷を行っているケースもある。
「まじめで頑張り屋、ほめられることの多い子が、何らかの挫折をきっかけに、痩せている自分の姿に自己肯定感を求めるようになり、ダイエットをきっかけに神経性やせ症を発症するケースが多いです。まれに男性に見られる場合もあります」と泉院長は説明する。
体重の減少が続くと、無月経、低血圧、便秘、徐脈などの症状が表れる。重症化すると甲状腺機能低下、子宮・脳の萎縮のほか、頻回の嘔吐や、利尿薬・下剤の乱用を行っている場合には低カリウム血症などの異常が表れる。最悪の場合、自殺のほか、心不全、多臓器不全などに伴う死亡の危険すらあるという。
▽周囲が気付きと理解を
神経性やせ症の治療では、心理教育、食事療法、さまざまな心理療法が中心になる。患者は自分が病気であるとの認識に乏しいことが多いので、何よりも治療への動機付けが必要になる。「食事を正常に摂取しない状態を続ける危険性を理解することが治療の第一歩です。しかし、体重増加への嫌悪感や恐怖感は、病歴が長いほど強くなり、治療への動機付けが難しくなります」
心理療法で患者の不安に理解を示しながら、少しずつ体重を増加させ、身体機能の回復を目指す。入院での栄養治療が必要なケースもある。
「神経性やせ症の人は、自分ではなかなか病気に気付けません。家族など身近にいる人は、神経性やせ症を疑ったら専門医に相談してください。本人を否定せず、温かく見守ることが、治療にはとても大事です」と泉院長は周囲の適切な対応を促している。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/06/18 14:44)
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