オランダ・Radboud University Medical CentreのMilly S. van de Warenburg氏らは、小児の部分層熱傷(Ⅱ度熱傷)に対するドレッシング治療の効果をシステマチックレビューとメタ解析で検証。外用薬(主にスルファジアジン銀クリームなど銀含有外用薬をガーゼに塗布して使用する従来の治療法)に比べ、銀を含まない創傷被覆材(非銀系創傷被覆材)および皮膚代替材(人工皮膚)は痛みや瘢痕、感染、治癒期間など臨床上重要な複数の転帰で優れている可能性が示されたとBurns(2025; 51: 107428)に報告した(関連記事「熱傷では適切な初期治療が重要」)。
0〜18歳が対象の論文を解析
熱傷治療におけるドレッシングの選択は、創傷の治癒速度や瘢痕の形成、痛みの管理、費用効果など、さまざまな側面に影響を与える。小児は成人に比べて皮膚が薄く、水分喪失が多く、活動性も高いため、より繊細かつ個別性の高い対応が求められる。しかし現状では、施設間や医師間で治療法にばらつきがあり、標準的な治療指針は確立されていない。こうした背景からvan de Warenburg氏らは、小児の部分層熱傷に対する既存の治療法を体系的に整理し、効果を評価するためのシステマチックレビューとメタ解析を行った。
文献検索はPubMed、EMBASE、Web of Science、CINAHLの4つのデータベースを用いて実施。過去20年間に発表された英語論文で、0〜18歳の部分層熱傷の治療成績を報告したランダム化比較試験、コホート研究、症例集積研究、症例報告を収集した。
最終的に68件・8,199例(平均年齢3.1歳、熱傷の平均受傷面積15.6%)を抽出。このうち質が低いと判断されたものや、適応外製品を扱ったものを除いた56件を対象に、創傷治癒期間、ドレッシング交換回数、入院期間、創部感染率、植皮の必要性、肥厚性瘢痕の発生率を評価項目とするメタ解析を行った。
人工皮膚と非銀系創傷被覆材が多角的に有用な可能性
その結果、平均創傷治癒期間は全体で14.0日で、治療法別に見ると外用薬群で15.1日、創傷被覆材群で12.6日、人工皮膚群で13.7日だった。ドレッシング交換回数は外用薬群が最も多く(10.7回)、人工皮膚群が最も少なかった(4.2回)。平均入院期間は全体が6.7日で、人工皮膚群が5.2日と最短だった。
感染率は全体で4%、植皮の必要性は12%であり、治療法による有意差は認められなかった。一方で、痛みに関する記述では、外用薬の使用において「頻回の疼痛」や「処置時の強い痛み」が多く報告されたのに対し、人工皮膚では鎮痛薬の使用量が従来のドレッシングと比べて少なく、無痛処置が可能となった例もあった。また高所得国に限定した解析では、銀系創傷被覆材に比べて非銀系創傷被覆材の使用による肥厚性瘢痕の発生率が有意に低かった(42% vs. 13%、P=0.04)。一部の研究では、外用薬と比べ銀系創傷被覆材が費用抑制に寄与したとの報告もあったものの、総じて人工皮膚および非銀系創傷被覆材が、鎮痛薬使用量の減少、入院期間の短縮、ドレッシング交換回数の低減を通じて、治療費の抑制につながる可能性が示された。
以上から、van de Warenburg氏らは「小児の部分層熱傷治療において、外用薬と比べ人工皮膚および非銀系創傷被覆材が治癒促進、痛み軽減、瘢痕予防、費用抑制といった面で有利である可能性が示された。治療法の選択に当たっては、患者背景や施設の状況を踏まえた上で、こうした選択肢の利点を考慮することが望ましいと考えられる」と結論している。
(編集部・長谷部弥生)