治療・予防

女性だけでなく男性にも―体の冷え
がんや感染症のリスクも(東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 川嶋朗教授)

 “万病のもと”と言われる「冷え」は、女性だけでなく男性にも少なくない。しかし、男性と女性では冷えに対する意識に大きな違いがあり、男性の方が無防備だという。東京有明医療大学保健医療学部鍼灸(しんきゅう)学科(東京都江東区)の川嶋朗教授に聞いた。

男性も自分の冷えを意識し、改善を

 ▽自覚乏しい男性の冷え

 冷えの原因は、運動不足による筋力低下や偏った食事、ストレス、エアコンの普及など多岐にわたる。こうした影響から、体が冷えている人が増えている。「1957年に行われた日本人の平均体温に関する研究によれば、男女10~50代の平均体温は36.9度でした。現在はそれよりもかなり低い人が多いのではないでしょうか」と川嶋教授は話す。

 体温が低い人は血行が悪く、基礎代謝の低下や免疫力の低下とも関連する。「がんや感染症、うつの患者さんを診察していると、低体温の人が少なくありません」

 しかし、男性は冷えに対する意識が女性ほど高くない。「女性は冷え対策を生活の中に上手に取り入れている人が多いのに対し、冷え対策をしている男性はほとんどいません。何らかの病気になって初めて“冷え”があったと訴える人も少なくないのです」と川嶋教授。

 ▽体温低めなら対策を

 冷え対策には食事運動習慣、エアコンの設定温度など、生活の見直しが必要だ。男性の場合は冷えの自覚がない人が多いため、家族など周囲の協力も重要になる。身体を冷やすアルコールや血行を悪くするたばこをやめる、温かい食べ物を積極的に取る、有酸素運動で血行を良くする、筋肉量を増やす運動をする、入浴など、日常生活での積み重ねが冷えの改善につながる。

 特に筋肉は熱の産生に大きく関わっているため、運動によって筋肉量を増やすこと。それにより、寒い時には筋肉が熱を産生して体温を高い状態に保てるようになる。免疫力が高まることで風邪を引きにくくなるほか、生活習慣を改善することにより健康維持が期待できる。

 体温が36度以下だったり、起床時に布団の中で脇の下よりおなかが冷えていたりした場合は、冷えが進んでいるサインだ。川嶋教授は「新型コロナウイルス感染症の影響で、毎日体温を測る人が増えています。36度以下の人は生活習慣を見直し、冷え対策をしましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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