治療・予防

食事でがんを予防できるか
特定の食品の過剰摂取で弊害も(国立がん研究センター社会と健康研究センター 津金昌一郎センター長)

 がんの予防の観点から、食生活とがんとの関連についての研究が進みつつある。最新の科学的根拠(エビデンス)に基づき、がんのリスクを高める食品や予防効果のある食品について、国立がん研究センター(東京都中央区)社会と健康研究センターの津金昌一郎センター長に聞いた。

食品と日本人のがんリスク(部位別)

食品と日本人のがんリスク(部位別)

 ▽リスクを減らす食事

 津金センター長らが、がんと食生活について複数の研究結果を基にリスク評価を行ったところ、〔1〕野菜と果物が食道がんのリスクをほぼ確実に下げる〔2〕食塩・塩蔵食品が胃がんのリスクをほぼ確実に上げる〔3〕食道の粘膜を傷つける熱い飲食物が食道がんのリスクをほぼ確実に上げる―ことが明らかになったという。予防の可能性が示唆される食品はほかにもあり、今後エビデンスが増えた場合に「ほぼ確実」への移行も考えられる。

 加工肉や赤肉は大腸がんのリスクを上げる可能性が高いが、赤肉には鉄や亜鉛、ビタミンB12など必要な栄養素も多い。日本人は欧米人に比べて肉の摂取量が少ないため、「国際的な基準である週に500グラム(調理済み摂取量。生肉では1日約100グラム)を超えない範囲で積極的に取ることが望ましい」と津金センター長は話す。

 ▽全身の健康も考慮する

 一方、サプリメントで高用量のβカロテンを摂取すると肺がんのリスクが増加するという国際的な研究報告もあるが、食事から摂取する場合はがんや心血管疾患の予防も期待できる。津金センター長は「がん予防にこだわり、特定の食品を過剰に摂取したり避けたりすると、予防効果がないばかりか何かしらの弊害が生じることが多いのです」と指摘する。

 重要なのは摂取量だ。野菜と果物は1日当たり約400グラム、塩分は1日当たり成人の男性が7.5グラム、女性は6.5グラムまで、塩蔵食品は週に1回程度が推奨されている。熱い飲食物は極力控えること。また、過度な飲酒はがんのリスクを確実に上げるとされるため、アルコール換算で1日約23グラム(ビールなら大瓶1本分)にとどめるとよい。

 食物繊維やカルシウムが大腸がんのリスクを低下させるというエビデンスも増えつつある。どちらも不足しがちな栄養素であるため、「積極的な摂取を勧めます」と津金センター長。成人の場合、食物繊維の摂取量は1日24グラム以上、カルシウムは男性720~790ミリグラム、女性620~670ミリグラム程度を推奨している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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