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結婚でハワイへ移住、すぐ気付いた
「アナウンサーだけでは食べていけない」 小椋かりーん弘恵さん

 この年末年始、ハワイ旅行を計画中の人もいるでしょう。今回は、米ハワイ州で日本人・日系人向けに、24時間放送をしているハワイ州公認の日本語ラジオ局「KZOO(ケイズー)」の顔、かりーんさんにお話を伺いました。

 日本人観光客が多く訪れるアラモアナショッピングセンターの1階にKZOOのスタジオがあります。ショッピングついでに、ガラス張りの窓から放送の様子をご覧になってはいかがでしょう。

「2019ホノルル歌舞伎~ハワイ日系移民150周年事業~」のレセプションで。左から中村芝翫さん、かりーんさん、 中村橋之助さん 中村福之助さん【かりーんさん提供】

 かりーんさんは、朝のローカルニュースから夕方のワイド番組まで、幅広く企画・構成を担当し、DJまでこなすパーソナリティー兼プロデューサー。

 ハワイの政治からエンタメまで、知識豊富な女性として、ハワイに住む人なら、誰もが知っているスーパーウーマンです。移り住んだ国でキャリアを伸ばしてきた経験を伺いました。

 ◆局アナから転身

 海原 かりーんさんは名古屋出身で、FM静岡に入社した後、フリーアナウンサ―になったと伺いました。それが、なぜハワイに。

 かりーん それ以前に、趣味でハワイのラジオ局などを聞いたり、調べたりしていて、漠然と、次のステージで生涯現役のワンマンDJ(放送を1人でこなすDJ)になれたらいいな、とは思っていました。

 学生時代に留学経験があり、海外に住むことに抵抗がなかったのと、当時、毎月2、3度は国内で飛行機移動をしていたことなども、大きかったと思います。スーツケース二つで引っ越してきました。

 海原 結婚でハワイに移ったのですね。どこで知り合ったのですか。

 かりーん 女子旅でハワイに来て、買い物で別行動をとっていた最中に知り合い、その後、友人となった人と結婚しました。

 「英語での生活はどうかな?」と彼に言ったら、「日本語でも通じない人はいるでしょ」と言われて。「それはそうだな」と妙に納得したのを覚えています。出たとこ勝負な毎日で、今まできています。

 ◆物価は高く賃金は低い

 海原 どのようにキャリアを積み上げたのか、教えてください。

 かりーん ハワイに来てすぐ、アナウンサーだけでは食べることができないかもしれない、と気付きました。

 局の中で自ら工夫をし、企画、営業、制作の仕事をパッケージのように、さまざまなカテゴリー、ジャンルに合わせて立ち上げ、成し遂げの繰り返しです。

 ハワイのマイナス点は、とても物価が高いことです。一方、賃金は比較的低いため、子供のいる多くの人は、ダブルジョブを強いられます。

ハワイを代表するウクレレアーティスト、ジェイク島袋さん(右)と【かりーんさん提供】


 海原 仕事のスタイルで日本との違いはありますか。

 かりーん 例えば、時間の感覚がハワイではゆっくりです。会議がなかなか始まらず、イライラします。しかし、自分が遅れたとしても、笑顔で迎えられたり。

 返事を求めようにも、すぐには返ってこないので、気が長くなります。

 また、米国本土のスポンサーと仕事をしている時、一度、問題が発生し、それに即座に対応した件では、その3日後に仕事を「倍」、任されることになり、驚きました。

 失敗よりも、素早い対応の方を評価してくれて、先を見てくれたのです。より一層、期待に応えようと頑張り、互いが相乗効果で、思った以上に成果が得られました。


 海原 日本では忖度(そんたく)が話題になりましたが、ハワイではどうですか。

 かりーん 英語は結論から先に言って、後から理由を述べるため、私自身、思うことを伝えるとき、以前より、はっきり物を言うようになりました。周りも、先ず自分を主張する人が多いですね。

 さらに、仕事は全て契約書、署名の上に成り立つため、日本独特の曖昧さはなるべく排除して、仕事をするようにしています。

 ハワイは、文化的にさまざまな背景を持つ人々が暮らす場所ですので、それぞれの文化を尊重しながら、生活、仕事をしています。

 ◆「誰々のママ」とは呼ばれない

 海原 女性が働くことについては、どうですか。

 かりーん 女性には、とても働きやすい環境だと思います。例えば、米国の場合、履歴書で年齢を明かす必要はありません。

 極端な話、80代でも元気で、意欲があれば、職に就けます。一応、リタイアの年齢は、65才くらいからですが、多くの人はリタイアしません。公共交通機関が主にバスのため、車を自分で運転して通勤する人も多いです。

 子どものいる女性も「誰々のママ」という呼ばれ方ではなく、一人一人の名前で交流を持ちます。

 海原 「Aちゃんのママ」とか、「Bさんの奥さん」とは呼ばれないんですね。

 かりーん 子どもは高校生まで送り迎えがあったりで、その点は大変なのですが、そのような状況も仕事の融通が利いたり、周りも協力したりが当たり前です。

 働く上で、女性というカテゴリーに縛られることはありません。組織のリーダーとして活躍する女性もたくさんいます。

 海原 今後はどんな方向を目指していますか。

 かりーん 先日、「10年後は?」と聞かれ、答えられませんでした。とにかく、今を生きています。

 「寝なくても健康だったら、どれほどよいか!」と思うくらい、限られた時間が恨めしいです。インタビューしたり、イベントに足を運んだり、自らの経験こそが、喋り手の命かなと思っています。

  取材後記:大変なことも多いはずの環境の中で生き抜いてきたのは、とにかく「今」の出会いを大事にして、今できることを精いっぱいする、という資質かなと思いました。ただ、こうした資質を生かせるハワイの社会の持つ自由さ、おおらかさがうらやましくも感じました。また、ハワイのように、個人の資質で勝負できると、年をとることも、怖くないかもしれませんね。日本では、年とったらおしまいというような風潮がかなりのストレスになります。女性が働き続けることが自然なハワイの社会はうらやましい感じがしました。

 小椋かりーん弘恵(オグラ・カリーン・ヒロエ)

 名古屋市出身。南山大学経済学部卒。局アナウンサーとしてFM静岡に入社後、フリーランスとして名古屋を拠点に東海、東京、九州のFM局などで音楽番組を掛け持ち、レギュラー多数。2002年4月にハワイに渡り、全米唯一の24時間放送日本語ラジオ局「KZOO」で活躍中。

(文 海原純子)

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