治療・予防 2024/12/27 05:00
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早期発見と治療法の進歩によって治るがんが増える中、膵臓(すいぞう)がんは予後(病気の経過)の悪いがんの代表とされている。杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)腫瘍内科の古瀬純司教授は「膵臓がんは、胃がんや大腸がんのように検診で早期に発見することが難しいがんです。早期発見には、腹痛や背中の痛みがあった時に膵臓のチェックも受けることが大切です」と話す。
リスク因子が多い人は、定期的なチェックを
▽早期発見に課題も
膵臓は、胃の裏側にある、タラコに似た形と大きさの臓器。消化吸収のための膵液と血糖をコントロールするインスリンというホルモンを産生している。
膵臓がんは患者が増加傾向にあり、予後不良である。国立がん研究センターによると、がんと診断されてから5年間生存する患者の割合は、がん全体では60%を超えるのに対し、膵臓がんでは10%未満にとどまる。
膵臓がんの予後が悪い理由の一つに、早期発見の難しさが挙げられる。離れた場所にある臓器などに転移する「遠隔転移」で発見されるケースが約50%、切除可能な比較的早期の段階で見つかるのは約20%にすぎないとされる。
膵臓がんになりやすいのは、膵臓がんにかかった近親者がいる人、糖尿病や慢性膵炎、膵嚢胞(のうほう)がある人、肥満の人、喫煙や大量飲酒の習慣がある人などだ。古瀬教授は「これらのリスク因子が複数あれば、専門医に相談し、定期的にチェックを受けた方がいいでしょう」とアドバイスする。
膵臓がんは、胃が痛い、背中が痛い、皮膚や白目の部分が黄色くなる黄疸(おうだん)、糖尿病の悪化などの症状から見つかることが多い。「膵臓がん特有の症状はないため、これらの症状が表れたら、膵臓がんの可能性も疑って積極的に血液検査や超音波検査を受けてほしい」
▽薬物療法で予後が改善
膵臓がんでは、ほとんどの患者が化学療法を受ける。2001年から徐々に新しい薬が承認され、複数の薬剤を組み合わせることで以前に比べると生存率が上がってきた。膵臓は血流が乏しく、がんの周囲に間質と呼ばれるバリアーができるため、抗がん薬が届きにくいと言われてきたが、その課題をクリアする抗がん薬も登場している。選択肢が増え、薬が効かなくなったり、副作用のため薬を中止せざるを得なくなったりした場合でも、次の手を打つことができるようになったという。
古瀬教授は「膵臓がんの治療成績は10年前と比べて向上しています。副作用の管理に注意してしっかり治療すれば、さらに生存期間を延ばせる可能性があります」と期待している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/01/25 05:00)
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