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8割の自治体が4月中に接種開始
~高齢者向けコロナワクチン~
「情報不足」指摘も 時事通信・地方行財政調査会の全国109市区調査

 新型コロナウイルスワクチンの65歳以上の高齢者向け接種を控え、時事通信社と地方行財政調査会は合同で全国の政令市や中核市など計109団体を対象にアンケート調査を実施した。その結果、4月中に開始する意向を示したのは8割超の87市区に上ることが分かった。一方、ワクチン供給に関して国からの情報不足を不安に感じると答えた自治体も約8割に達した。

新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける北九州市の北橋健治市長(左)=2021年4月12日、同市小倉北区

 ◇終了時期は約半数が7月

 調査対象は政令市、中核市(2021年4月移行の2市を含む)、県庁所在市と東京23区。2月末時点での見通しを尋ね、106市区から回答を得た。回収率は97.2%。

 接種の開始時期について、「4月12日」と明示したのは30市区。「4月中旬」や「4月下旬」、「4月以降」などの回答を含めると、4月中に着手する意向を示したのは全体で87市区(82.1%)となった。残りの大部分は「調整中」や「未定」、もしくは無回答だった。

 終了時期は「6月末ごろ」と見込むのが最多の29市区(27.4%)。7月末ごろまでに終える見通しは23市区(21.7%)で、約半数が7月末までの終了を想定していることが分かった。8月以降、22年3月末までは計11市区(10.4%)だった。

 ただ、「未定」や「調整中」などと具体的な終了時期の回答を避けたのは43市区(40.6%)に上り、ワクチン供給に関する情報不足などで先が見通せない状況となっている実態も浮き彫りとなった。北海道函館市は、「未定」と回答した理由を「ワクチンの供給について不明確であり、確定していない」と説明した。
ワクチン確保に不安、余剰分の活用検討も

 複数回答で不安に感じていることを尋ねると、「必要なワクチンの確実な入手」(102市区)が最も多かった。次いで「国からの適切な情報提供」が82市区に上り、「接種を担当する医師・看護師の確保」(57市区)、「予約・接種記録情報の管理」(48市区)が続いた。

 接種施設で急なキャンセルなどにより、ワクチンが余った場合の対応を尋ねたところ、「廃棄する」はゼロ。「その他の対応を取る」は13市区(12.3%)で、具体的には「高齢者施設で従業者に同時接種する場合がある」(山形市)、「コールセンターにてキャンセル待ちリストを作成し、キャンセルやワクチン余りが発生した医療機関等に接種希望者を案内する」(熊本市)などだった。「未定・検討中」と答えた92市区(86.8%)のうち、「キャンセル待ちの実施を検討」(中野区)と言及する自治体もあった。

 会場選定で重視した項目(複数回答)は「接種を受ける高齢者の自宅から近く、行きやすい」が最多の73市区。「会場が広く、密を避けられる」(61市区)、「医師が接種する人の健康状態を把握している」(60市区)、「多人数を効率的に接種できる」(59市区)も、それぞれ半数を上回った。

 ◇医師確保は多数が未確定、見通し求める声

 必要な医師と看護師の確保状況を聞くと、「100%」と回答したのは医師で7市区(6.6%)、看護師で8市区(7.5%)にとどまった。接種の終了時期と同様、今後のスケジュールがはっきり示されていないため、多くの自治体では調整や検討を進めていると答えた。

 国への要望では「ワクチンの供給量や供給時期等について、中長期的なスケジュールを早急に示していただきたい」(相模原市)と今後の見通しに関する意見が集中。仙台市は「ワクチンの供給計画および、感染症収束に有効と考えている接種率を示されたい」と、接種率の提示も求めた。

 職員の事務や財政の負担軽減を求める声も相次ぐ。大阪府吹田市は「V─SYSや接種記録管理システムに関して、さらに詳細な情報提供を行うとともに、運用において自治体の新たな財政負担が生じないよう配慮いただきたい」と強調。高知市は「マイナンバー連携の接種記録管理システム運用において、自治体や医療機関の負担軽減を図ること」を要請し、東京都葛飾区は「接種を行う医師・看護師の派遣支援」と現場への人的支援を促した。

八王子市役所に設けられた高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種会場=2021年4月12日、東京都八王子市

 ◇情報発信に苦言も

 情報発信の在り方をめぐり、盛岡市は「ツイッターなどでの迅速な情報提供も必要とは思うが、方針やスケジュールなど市区町村での準備に影響が生じることについては、適切な手段をもって通知してほしい」と要望。「開示する情報は、記者会見も含めて確定情報のみにしていただきたい」(埼玉県川越市)といった苦言も見られた。

 浜松市は「ワクチンの供給が極端に少ない中、高齢者接種開始を指示しないでいただきたい」と指摘。「国の方針が毎日のように変更されることから、それに合わせて毎日、対応せざるを得ない」(岐阜市)と困惑する声も聞かれた。

 川崎市は「接種者数を増やすことは重要なことではあるが、自治体間のスピード競争ではなく、安全性がおろそかにならないよう、国としても『安全かつ確実』という観点をより強く発信していただきたい」と要請した。

 長崎県佐世保市は「総人口が1000人を超える場合においても、高齢者の接種時期に島民全員に接種をしたい」と回答。地域特有の課題に対応するため柔軟な運用を認めるよう求めた。「自治体独自の接種順位設定を認めてほしい」(福岡市)のように、接種に関して地方の裁量に委ねるよう訴える声は他にもあった。

 ◇「密」回避、効率化に腐心

 独自の工夫に関しては、佐賀市が集団接種に際して「ウェブ上での予約システムを導入することで予約センターの混雑防止」を紹介した。東京都江東区も「集団接種会場内に看護師による相談ブースを設置し、事前の相談に対応することで医師による予診時間の短縮を図る」と示した。

 「実施医療機関の負担が大きくなることが予想されるため、負担軽減のため接種予約の受付、基本型接種施設からのワクチンの輸送、接種実績の入力などを代行する方向で検討している」(岡山県倉敷市)など医療従事者への配慮も見られた。

新型コロナウイルスワクチンの接種を終え待機する高齢者ら=2021年4月12日、東京都八王子市

 ◇東京23区、半数超が集団接種中心

 最も人口が集中する東京23区では、半数超が集団接種を中心に進める計画だ。その理由としては「当初の国の説明では、ワクチンの小分けは難しいとされていたため」(足立区)、「(集団の方が管理しやすい)ファイザー社製ワクチンの特性を踏まえた」(荒川区)などが挙げられた。

 個別接種が中心と回答した区のうち、練馬区は1月時点で、独自方式として個別接種計画を打ち出していた。4月中の供給量が極めて限られる中、まずは特別養護老人ホームで接種を開始し、「十分に供給されたら診療所での接種を始める」(担当者)としている。

 接種の終了時期については、6〜8月の間で回答したのが13区、8区が未定など。中央区と豊島区は22年2〜3月までかかると回答したが、うち豊島区の担当者は「(供給スケジュールが)現時点で分からず、国が公表している期限に合わせるしかない」と説明した。(時事通信社「厚生福祉」2021年4月6日号より転載)

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