治療・予防

日常生活に支障―片頭痛
新しい予防薬も登場(熊本市民病院脳神経内科 橋本洋一郎科長)

 ズキンズキン、ドクンドクンと脈打つように痛む片頭痛。日常生活に支障を来し、ひどいと寝込むほどになる。診断、治療されていないケースも多く、何十年も苦しんでいる人がいる。最新情報を含め、熊本市民病院(熊本市)脳神経内科の橋本洋一郎科長に聞いた。

生活習慣を改善することで片頭痛が改善できる

 ▽全身に症状が出現

 片頭痛は頭が痛いだけでなく、全身に症状が表れる。吐き気嘔吐(おうと)、めまいのほか、光や音、においが気になることが多い。発作は4時間から3~4日続き、一度治ってはまた起こる。体を動かしたり、入浴したりすると悪化する。発作の30分ほど前から、前兆としてきらきら輝く光がぎざぎざ状に広がって物が見えなくなる(閃輝暗点=せんきあんてん)、物がゆがんで見える、言葉が出にくくなるなどの症状が起こることもある。発作の24時間ほど前から生あくびが出る、感覚が鈍くなる、落ち着きがなくなる、眠気がする、肩が凝る、甘い物が無性に食べたくなるなどの予兆が表れることもある。

 ストレスや過労が引き金となるが、それから解放された時も起こりやすい。いらいらしても、ほっとしてもだめ、寝過ぎや寝不足もよくない。橋本医師は「毎日食事をきちんと取り、規則正しく生活するよう心掛けることが重要です」と話す。

 女性に多く、子供の頃に車酔いを起こしやすかった人も少なくない。小学校の高学年頃から発症し、30代でピークになる。30代、40代の女性の5人に1人は片頭痛持ちだ。働き盛り、子育て世代の女性がつらい症状に苦しんでいることが多い。通常は年とともに軽くなり治っていくが、50代、60代まで悪化する人もいる。

 ▽薬は必要な分だけ

 発作時には頓挫薬で治療する。頭痛が軽い場合はいわゆる痛み止めを、痛みが強い場合には特効薬のトリプタンを使う。頓挫薬だけでは日常生活に支障がある場合は予防薬が使われる。「頓挫薬は必要な分だけにしてください。予防的に使うと、薬の使用過多によりかえって頭痛が悪化する(薬物乱用頭痛)恐れがあります。市販薬の使い過ぎにも注意が必要です」と橋本医師。

 今年は新しい予防薬が登場。片頭痛の発作を引き起こすカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という物質に働いて頭痛を抑える。何十年も苦しんできた患者でも、月1回の注射で頭痛発作の回数や頭痛の程度が改善するなど、高い効果が期待できそうだ。

 橋本医師は「適切な診断と治療で人生が変えられます。長年苦しんでいる人には専門医を受診してほしい」と勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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