治療・予防

まれではない「子どもの片頭痛」
薬と1~2時間の安静で対処(埼玉国際頭痛センター 坂井文彦センター長)

 頭の片側が脈打つように痛む片頭痛は若い女性に多い印象があるが、子どもに起きることもまれではない。ひどい頭痛吐き気嘔吐(おうと)を伴い、日常生活に支障を来すことも多い。埼玉国際頭痛センター(さいたま市)の坂井文彦センター長は「子どもの片頭痛は見逃されやすく、不登校の原因にもなりかねません」と危惧する。

これらの症状が見られたら、片頭痛を疑う

これらの症状が見られたら、片頭痛を疑う

 ▽時々、嘔吐が特徴

 子どもの片頭痛の頻度については、埼玉精神神経センターが2018年に調査を行っている。それによると、約6200人の小学4年生から中学3年生の学生のうち、小学生の約1割、中学生の2割に片頭痛と思われる症状が認められた。ただ、頭痛は本人の訴えに基づき評価されるため、正確な診断は極めて難しい。坂井医師は「調査結果は慎重に解釈する必要がありますが、子どもにも片頭痛があることは明らかです。保護者や学校の教師は、それを念頭に置く必要があるでしょう」と強調する。

 子どもの片頭痛には、大人と比べて、時々(月に数回程度)起こる、痛みがないときはケロッとしている、吐き気嘔吐を伴うといった特徴が見られる。普段は元気な子どもが時々、急に頭痛を訴えて動くのを嫌がるようになったら片頭痛を疑う。他にも、持続時間は2時間程度と比較的短い、両側のこめかみが痛む、ズキンズキンとした脈打つ痛みとは限らない、生あくびをするようになるなどの特徴もある。

 ▽学校側の理解も重要

 子どもの頭痛は、片頭痛以外にも感染症や副鼻腔(びくう)炎(蓄膿=ちくのう=症)に伴うものや緊張型頭痛など幅広い。そのため、医師の診察を受け、問診と必要に応じて磁気共鳴画像(MRI)検査やコンピューター断層撮影(CT)検査を行い、他の病気の可能性を除いた上で、適切な治療を開始することが肝要となる。

 軽い片頭痛にはアセトアミノフェンなどの痛み止めが効きやすい。嘔吐には吐き気止めの薬が処方される。「つらい頭痛には頓服薬(トリプタン製剤)という選択肢もあるので、主治医に相談してください」と坂井医師。薬は自宅に常備し、通学時にも携帯する。学校で発作が起こったら、薬を飲み、保健室で1~2時間ほど休めば痛みは消え、再び授業に戻れる。教師には片頭痛があることを事前に伝え、対処法についても理解を得ておくとよい。

 主な原因は遺伝だが、空腹やストレス、光や音、天候などが片頭痛発作の引き金になり得る。坂井医師は「朝食をしっかり食べて空腹を避ける、ストレスをためない、身体を動かし生活リズムを整えるなどして、片頭痛の引き金を自分でコントロールすることが大事です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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