治療・予防

つらい女性の片頭痛
ライフステージで変化

 頭の片側あるいは両側が心拍にあわせてズキズキするのが片頭痛だ。悪心や嘔吐(おうと)、光・音に対して過敏などの症状を伴う。片頭痛のある女性はない女性に比べ、脳卒中や心血管疾患、心筋梗塞などのリスクが高いといわれ、特に30代の女性の有病率が高い。ただ、患者自身の認識度の低さから医療機関の受診率は極めて低く、職場などにおける理解も十分に進んでいるとは言えない。

女性を苦しめる偏頭痛

女性を苦しめる偏頭痛

 ◇3大慢性頭痛の一つ

 国際的な分類によると、頭痛の種類は367もあるという。「1時性頭痛」は92種類で、頭痛そのものが病気だ。言葉は悪いが、患者は「頭痛持ち」とも言われる。

 2次性頭痛は275種類で、くも膜下出血髄膜炎などの脳の病気、インフルエンザ、副鼻腔(びくう)炎など他の病気が症状の原因とされる。片頭痛を含む「3大慢性頭痛」という言葉がある。片頭痛の他には、頭が締め付けられるように痛む「緊張型頭痛」と目の奥に鋭い痛みが走り、じっとしていられない「群発頭痛」だ。

 ◇女性ホルモンと関係

 片頭痛の発症メカニズムは完全に解明されているわけではないが、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンに関連があるともされる。女性の場合、結婚や出産、育児、親の介護、仕事などライフスタイルの多様な変化によりさまざまなストレスを抱えることが頭痛を誘発したり、症状を悪化させたりすることもあると考えられている。

 例えば、ある56歳の女性は高校生の頃から頭痛を感じていたが、出産の後で片頭痛がひどくなった。仕事では管理職になり、家庭では2人の子育てに追われ、症状が悪化。一時は休職した。しかし、専門医の治療によって復職し、現在は片頭痛と付き合いながら仕事と家庭生活を両立させている。

オフィスで働くIT企業社員ら(イメージ。本文とは関係ありません)

オフィスで働くIT企業社員ら(イメージ。本文とは関係ありません)

 ◇つらさを分かってもらえない

 2019年に日本イーライリリーが20歳以上60歳未満の就業者を対象に実施したインターネット意識調査によると、回収数600件のうち半分の300件が「医師から片頭痛と診断されている」「片頭痛症状を一つ以上有する」「片頭痛の発作が月2回以上ある」「日常生活に支障がある」「群発頭痛や2次性頭痛、その他の頭痛ではない」としている。

 さらに、「自分自身は片頭痛ではないが、現在の職場に片頭痛と診断された人がいる」などの回答が150件に達した。

 仕事に支障が出るほどの片頭痛の症状があったときには、どうするのだろうか。告知状況に関して聞いたところ、「上司に知らせる」が58%、「親しい同僚」56%、「業務上で近い同僚」54%などとなった。

 一方、片頭痛を周囲に知らせない理由については「伝えてもつらさを理解してくれないと思ったから」「伝えることで評価が下がると思ったから」などと回答。中には、「家族や友人・知人に告知したら嫌な顔をされたから」「以前就業していた会社で告知したら、嫌な顔をされた経験があったから」といった声もあった。

頭痛外来を担当する五十嵐久佳さんの講演

頭痛外来を担当する五十嵐久佳さんの講演

 ◇周囲の理解が重要

 富士通の産業医で富士通クリニックと東京クリニックで頭痛外来を担当する五十嵐久佳さんは「患者は理解されないという悩みを抱えている」と分析。「片頭痛は主観的な症状が主で、痛みや生活への影響に関して周囲との認識にギャップが生じやすい」と話す。

 周囲の人は一般的に、痛みなどの体調に合わせて仕事を休むことに対する許容度は高い。五十嵐さんは「片頭痛による痛みの度合いや痛みに伴う症状が的確に周囲に理解されることが重要だ」とした上で、「体調に合わせた働き方を促進する制度や企業文化を構築していくことが期待される」と強調している。(鈴木豊)


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