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近年多発する豪雨災害などに伴う避難所での生活は慣れない環境下でトラブルも多く、「眠れない」という悩みもその一つ。東日本大震災の被災者の睡眠障害を調べた、東北大学災害科学国際研究所(仙台市)災害医療国際協力学分野の江川新一教授に聞いた。
東日本大震災の被害を受けた宮城県南三陸町の避難所=2011年3月撮影(AFP時事)
▽1万人の災害診療記録
東日本大震災で高さ約20メートルの津波に襲われた宮城県南三陸町。建物の6割以上が全半壊し、1万人近い被災者が避難所に入った。被災者の医療活動に当たったのは、同町の医師や全国から駆けつけたDMAT(災害派遣医療チーム)など。その災害診療記録は、5月13日までの約2カ月間で1万人分を超えた。
江川教授らはこの記録から世界でも例のない災害診療記録のデータベースを作り、睡眠障害の実態調査を行った。その結果、「もともと睡眠障害を含むメンタルヘルスの問題を抱えている人に多く見られること、また被災前にメンタルヘルスの問題がない人では、高齢(60歳以上)、女性、二つ以上の慢性疾患、避難所生活の四つがリスク因子になることが分かりました」と説明する。リスク因子が重なれば、睡眠障害を一層起こしやすくなると言う。
▽眠れないことで悩まずに
リスク因子を持つ人への対応は、「被災前からメンタルヘルスの問題がある人は避難所の医療スタッフに遠慮なく申し出てください。精神科医チームによる専門的な治療を受けられることが多いです」と話す。
「高齢者、特に女性は睡眠障害を起こしやすいのです。災害時は眠れないのが当たり前と考え、悩むより医療スタッフに相談してください。睡眠導入剤を処方されたら、指示通りに飲めば眠れるようになりますし、習慣性の心配もありません。男性はお酒で寝ようとする人が多いですが、眠りが浅くなり逆効果です」
複数の慢性疾患を持つ人は「睡眠障害で高血圧などの慢性疾患が悪化することもあります。やはり睡眠導入剤をもらうのがよいでしょう」。さらに「避難所生活そのものも睡眠障害のリスクになるので、段ボールベッド、間仕切りなど、避難所の環境整備も望まれます」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/11/21 05:00)
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