Dr.純子のメディカルサロン
また確実にやって来る災害に備える
~東日本大震災から9年が過ぎて~ 久保田崇・掛川市副市長(元陸前高田市副市長)に聞く
震災から9年が過ぎました。新型コロナウイルスについての報道が相次ぐ中、東日本大震災の記憶は薄れつつあるようです。
3月29日には、南海トラフ地震に備える事前避難の策定が予定されていましたが、まだ、それが完成していない都道府県も多いということです。最近も、各地で地震が起こっており、気になるところです。
震災当時に岩手県陸前高田市の副市長で、その後、立命館大学教授を経て、現在は静岡県掛川市の副市長を務める久保田崇さんに、被災地の今と今後の震災への準備について、お話を伺いました。
大震災から9年、仮設住宅の玄関には空室を示す張り紙が貼られていた=2020年3月4日、岩手県陸前高田市【時事通信社】
◆来春には避難者ゼロに
海原 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で、大震災の行事も影響を受けました。
久保田 東北の被災各地でも、自治体主催の追悼式は、中止や縮小が相次ぎました。仕方のないことですが、残念に思います。
復興庁が2月に発表した全国の避難者数は4万8000人で、震災直後の47万人と比べると、1割ほどに減少したことになります。また、震災から10年後の2020年度末に、ようやくゼロとなる見込みです。
◆教訓の第一は
海原 21年3月末には、仮設入居者がゼロということですね。やっと、という気がします。南海トラフ地震など、今後、実際に災害が起きたとき、何が大事なのかを教えてください。
久保田 私たちに今できることは、大震災の教訓を生かし、次の災害における被害を最小化することではないかと思います。逆にそうでなければ、震災で犠牲となり、お亡くなりになった方は浮かばれません。
その観点で、まず第一に挙げたい教訓は、「確実に逃げること」です。
私が陸前高田市に在任中に行った調査では、地震発生時にいた場所が津波浸水域となった人で、当日の行動について情報が得られた人のうち、被害がなかった人は、津波到達前までに8割の人が避難していました。
これに対し、犠牲者の場合、ご遺族の協力を得てアンケートを実施したのですが、その割合は5割程度にとどまり、4割の人は避難をしていませんでした。
◆逃げなかった理由とは
海原 大勢の人たちが逃げなかったのですね。
久保田 あれだけの大津波でも、逃げない人がいたということに、驚く人もいるかもしれません。
逃げなかった理由は「油断した」「家族やペットなどを助けに行った(戻った)」「足や耳が悪く、逃げ遅れた」「自力で逃げられなかった」など、さまざまです。
陸前高田市では、ハザードマップ上で津波浸水が1メートル前後と予想されていたエリアに、10メートルを超える津波が襲いかかりました。
ハザードマップ以上の災害が起こらない保証はないので、ハザードマップで浸水が予想されているエリアはもちろん、その周辺地域でも、確実に逃げる体制を取るべきです。
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(2020/04/10 08:05)