2024/12/06 17:18
キャラクター活用による病院内での心地よい空間づくりの取り組み
◇研究成果の概要
体内に初めて入ってきた抗原(ウイルスや細菌など)に対して効果的な獲得免疫が誘導されるには、基礎免疫学的に、抗原をとらえた樹状細胞が成熟・活性化してT細胞に抗原提示を行う必要があります。そのため、ワクチンには通常、樹状細胞を成熟・活性化するアジュバントが抗原とともに含まれています。私たちはこのたび、制御性T細胞による免疫抑制を一時的に除くことで、樹状細胞が成熟して抗原提示を行い、アジュバントと同程度に新型コロナウイルス抗原への獲得免疫が誘導できることを見いだしました。制御性T細胞の除去による樹状細胞の成熟で十分な獲得免疫を誘導できる、という基礎免疫学的な知見を見いだしたのみでなく、既存のワクチンとの併用など、制御性T細胞を利用した新型コロナウイルスなどの新興感染症に対する免疫誘導法の可能性が示唆されました。本研究は名古屋市立大学大学院医学研究科免疫学山崎小百合教授、浦木隆太助教(現国立国際医療センター上級研究員)らが中心となって、国立国際医療センター・東京大学医科学研究所・米国ウィスコンシン大学マディソン校河岡義裕教授との共同研究で行われました。
【背景】
新型コロナウイルスSARS-CoV-2によるパンデミックは世界の人々の人命を脅かすだけでなく、経済や平和にも大きな打撃を与えています。SARS-CoV-2抗原に対する獲得免疫の誘導がどのようにコントロールされているか、を明らかにすることは大変重要です。私たちは、制御性T細胞の抑制を一時的に除くことで、外から投与されたSARS-CoV-2抗原のS1タンパクに対して獲得免疫系が誘導されるか、をマウスモデルで検討しました。
【研究の成果】
制御性T細胞を一時的に除くことで、S1タンパクを取り込んだ樹状細胞が成熟して抗原提示を行い、S1タンパク特異的な抗体産生、インターフェロンγ産生T細胞がみられ、有効な獲得免疫が誘導できることがわかりました。制御性T細胞を一時的に除くことで誘導された抗体産生やT細胞の誘導は、既知の有効なアジュバントの一つであるpoly IC と同程度に誘導されました。また、poly ICの併用で抗体産生、インターフェロンγ産生細胞の誘導も増強されました。
【研究のポイント】
・制御性T細胞を一時的に除いてS1タンパクを投与すると、アジュバントがなくても樹状細胞が成熟して抗原提示を行い、有効な獲得免疫が誘導されます。
・産生された抗体は生きたSARS-CoV-2ウイルスの活性を中和する機能を持っていました。
・既知の有効なアジュバントの一つであるpoly ICと同程度に獲得免疫を誘導できました。
【研究の意義と今後の展開や社会的意義など】
獲得免疫の誘導には樹状細胞の成熟が必須です。この樹状細胞の成熟を導くにはアジュバントが必要であると考えられていました。今回の私たちの研究では、アジュバントが無くても、制御性T細胞の一過性の除去で獲得免疫が誘導できることがわかりました。これは、基礎免疫学の基本となる学術的知見といえます。また、新型コロナウイルスによるパンデミックの終息のためには、獲得免疫の誘導法や増強法の開発の必要性が高まっています。本研究成果は新規獲得免疫誘導法および増強法として使えるかもしれません。既存のワクチンとの併用など、制御性T細胞を利用した新たな免疫誘導法の可能性があり、社会的にも意義が高いと考えられます。
【研究助成】
本研究は、文部科学省・日本学術振興会科学研究費補助金(19K23868, 20K16265 (RU), 20K09911 (MI), 19K07510 (HS), 19KK0202, 21K18258,19H04812 (SY) , 名古屋市立大学特別研究奨励費(RU, SY), 東京大学医科学研究所国際共同利用・共同研究拠点 (RU), 公益財団法人 中冨健康科学振興財団 (HS), 公益財団法人武田科学振興財団 (HS, SY), 川野正登記念公益財団法人川野小児医学奨学財団(SY)、公益財団法人小林財団(SY)による助成を受けて行われました。
【論文タイトル】
Foxp3+ CD4+ regulatory T cells control dendritic cells in inducing antigen-specific immunity to emerging SARS-CoV-2 antigens
Foxp3+ CD4+制御性T細胞は樹状細胞をコントロールして新興SARS-CoV-2抗原に対する抗原特異的免疫反応を誘導する
【著者】
Ryuta Uraki1,#, Masaki Imai1, Mutsumi Ito2, Hiroaki Shime1, Mizuyu Odanaka1, Moe Okuda2, Yoshihiro Kawaoka2, 3, 4, 5 and *Sayuri Yamazaki1 (*Corresponding author)
浦木隆太1,#, 今井優樹1, 伊藤睦美2, 志馬寛明1, 小田中瑞夕1, 奥田萌2, 河岡義裕2,3,4,5,*山崎小百合1(*責任著者)
【所属】
1 Department of Immunology, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences
2 Division of Virology, Department of Microbiology and Immunology, Institute of Medical Science, University of Tokyo
3 Department of Special Pathogens, International Research Center for Infectious Diseases, Institute of Medical Science, University of Tokyo
4 Department of Pathobiological Science, School of Veterinary Medicine, University of Wisconsin-Madison
5 The Research Center for Global Viral Diseases, National Center for Global Health and Medicine Research Institute
#Current address: The Research Center for Global Viral Diseases, National Center for Global Health and Medicine Research Institute and Division of Virology, Department of Microbiology and Immunology, Institute of Medical Science, University of Tokyo
1名古屋市立大学大学院医学研究科 免疫学分野
2東京大学医科学研究所 ウイルス感染部門
3東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 感染症国際研究センター
4 Department of Pathobiological Science, School of Veterinary Medicine, University of Wisconsin-Madison, USA
5国立国際医療研究センター 国際ウイルス感染症研究センター
#現所属: 国立国際医療研究センター 国際ウイルス感染症研究センター、東京大学医科学研究所ウイルス感染部門
【掲載学術誌】
学術誌名PLoS Pathogens
https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1010085
doi: 10.1371/journal.ppat.1010085
【研究に関する問い合わせ】
名古屋市立大学 大学院医学研究科 免疫学教授 山崎小百合
〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
E-mail:immunol@med.nagoya-cu.ac.jp
【報道に関する問い合わせ】
名古屋市立大学 医学・病院管理部経営課
名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
E-mail:hpkouhou@sec.nagoya-cu.ac.jp
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2024/12/06 17:18
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