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手足の静脈に血栓(血の塊)ができる「深部静脈血栓症」と、それが血管内を流れ肺の動脈で詰まる「肺塞栓症」を合わせて、「静脈血栓塞栓症(VTE)」と呼ぶ。
成人だけでなく小児でも発症するが、発症率は小児1万人に1人未満と極めて少ない。「ただし、血栓を起こしやすい持病があり点滴治療が必要な0~1歳児ではVTEが起こりやすく、成人に比べ重症化するケースが多いです」と相沢病院(長野県松本市)エコーセンター長の安河内聡医師は話す。
深部静脈血栓症の主な症状
◇手術で血栓
深部静脈血栓症は、主に手足や骨盤内の深い部分にある静脈で血栓が生じる。血栓が大きくなり静脈の壁からはがれ、血流に乗って心臓を経由して肺動脈まで達して詰まると肺塞栓症となる。
「深部静脈血栓症だけではすぐに命に関わることはありませんが、静脈が血栓で詰まると足にむくみや痛みが生じたり、皮膚の色が赤紫色に変わったりします。ただし、血栓が小さく血流の障害がなければ無症状の場合もあります」と安河内医師。
一方、肺塞栓症は血液が肺に流れず十分酸素を得ることができなくなったり、心臓に血液がたまって心不全を生じ、肺から戻る血流が減って心臓から脳に十分な血液が送られず血圧低下や意識消失が起きたりするなど命に関わるケースもある。
0~1歳児は体格が小さく、血管自体も細い。「もともと全身状態が悪く血流が悪い小児に、心臓手術などの管理のために静脈にカテーテルを挿入すると、血管内皮が傷つきやすく、血流が妨げられ血液がよどむことで血栓ができるケースが多い。また、先天的に血液が固まりやすい病気の小児もいます」
◇小児用の薬も
成人でも小児でもVTE治療の中心は血栓を溶かす薬物療法だが、これまでは小児用に承認された薬はなく、成人用のVTE治療薬を適宜調整して処方されてきた。
最近、0~1歳児でも飲めて、他の薬や食事の制限が少なく、状態確認のための定期的な採血が要らない、小児で使用できるVTE治療薬が登場した。安河内医師は「小児適応を持つこの薬のおかげで親子も医療者も、薬物治療に対する負担が減りました」と話す。
先天的に血液が固まりやすい病気があれば、主治医の指示で継続的に薬を服用する必要があるが、そうでなければ症状が改善し薬物治療を終了できるケースもある。
安河内医師は「大切なことは、主治医とよく相談し、指示通りしっかりと薬を飲むことです。薬を飲んだり飲まなかったりすることで、かえって血液が固まりやすくなり、VTEの再発リスクが高くなったり、副作用としての出血のリスクが高くなったりします」と訴えている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/12/30 05:00)
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