血栓ができやすくなる本態性血小板血症
生活習慣病の改善などで合併症予防
「本態性血小板血症(ET)」は、血液中の血小板が異常に増加する病気だ。血液が固まりやすくなるため血栓を生じやすく、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすリスクが高まる。順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)血液内科の小松則夫主任教授は「適切な治療により、血栓症の予防は可能です」と話す。
▽血小板数が増加
血小板は、出血すると傷口をふさぎ、出血を止める役割を担う細胞で、骨髄の造血幹細胞で作られる。血小板の数は通常、血液1マイクロリットル当たり15~40万個程度だが、ETの患者では100万個を超えることも珍しくない。血栓症を発症しやすくなる一方で、異常な血小板が増えるため、逆に血を固める機能が落ちて鼻血や皮下出血といった出血傾向が見られることもある。
ETの発症原因について、小松教授は「遺伝子異常が造血幹細胞レベルで起こり、血小板が過剰に作られると考えられています。異常が起こる理由は解明されていません」と説明する。国内の発症者数は不明だが、欧米では年間10万人当たり1~2.5人と推定されている。60歳以上の高齢者に多いとされるが、30代の女性にも小さなピークがある。遺伝性疾患ではないため、子孫に影響することはない。
▽治療で改善、血栓症を予防
ETは、倦怠(けんたい)感や集中力の低下、無気力、視力障害、頭痛、手足の発赤や痛みなどの症状が表れる。しかし、治療により症状は改善されることが多く、脳梗塞や心筋梗塞、脳出血などの予防は可能である。
血小板の働きを抑えるためには、少量のアスピリンが用いられる。60歳以上、血栓症や出血の既往歴がある、血小板数150万個以上のいずれかの条件に当てはまる高リスク患者に対しては、血小板数を減らす治療法として、ヒドロキシカルバミドという抗がん剤やアナグレリドという薬剤を使用する。
一方、合併症の予防には、薬物療法に加えて、糖尿病や高血圧症、脂質異常症、肥満などの生活習慣病の改善、禁煙、脱水予防のため水分摂取を心掛ける必要がある。
小松教授は「血小板が増える病気はET以外にもありますが、ETを放置して血栓症や出血を起こすと、その後の経過や生活の質に大きな影響をおよぼします。健康診断などで血小板数が多いと指摘されたら、血液内科など専門医を受診することを勧めます」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/08/09 07:00)