2024/11/05 16:00
オイシックス・ラ・大地、東京慈恵医科大と共同臨床研究を開始
がん治療の化学療法時における、食事支援サービスの効果を研究
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 臨床疫学研究部(教授 松島雅人)は、日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター Practice-based research network(運営委員長 渡邉隆将)と共同で、在宅療養患者の追跡調査を行い、在宅療養を開始してから在宅で亡くなられる累積発生率を経時的に記述し、また在宅死に、在宅以外で亡くなられる場合と比べて、どのような要因が関わっているかを明らかにしました。
日本では、かつては自宅で亡くなるのが一般的でした。しかし、1970年代以降、病院での死亡の割合が自宅での死亡の割合を上回るようになり、現在では病院で亡くなることが当たり前になっています(注1)。、日本は米国、いくつかのヨーロッパの国々、韓国と比較して、全死亡に占める病院死の割合が高いという結果が出ています(注2)。また、、日本はスウェーデン、オランダ、フランスと比較して、自宅での死亡の割合が低いことが示されています(注3)。2019年、日本では個人宅での死亡はわずか13.6%でした(注1)。今回の研究The Elderly Mortality Patients Observed Within the Existing Residence (EMPOWER) Japan studyは、日本で医師主導の在宅医療訪問を受けている患者の予後と危険因子を丹念に追跡調査し、関連性を明らかにした私たちが知る限り初の多施設前向きコホート研究であり、本論文は在宅死について解析した、その第2報となります。
調査対象・調査方法・調査期間
(1)調査対象者、65歳以上で、2013年2月1日から2016年1月31日までの間に、東京大都市圏に位置する13施設から在宅で医師主導の定期的な医療を受け始めた方762人です。観察期間は2017年1月31日に終了しました。
(2)このうち調査中に亡くなられた368人について、在宅死に関わるであろう、在宅療養開始時の以下の12の調査項目(生物心理社会的変数)を用いて在宅死に関わる因子を同定しました。
生物医学的項目:①性別、②年齢、③がんの有無、④栄養状態(血清アルブミン値)、
⑤基本的日常生活動作(Barthel Index score)、⑥褥瘡治療の有無、
⑦在宅酸素療法/呼吸器使用
心理的事項 :⑧認知症の有無、⑨うつ傾向(Cornell Scale for Depression in Dementiaの日本語改訂版)
社会関連変数:⑩常勤介護者の有無、⑪一人暮らしかどうか、⑫生活保護受給者かどうか
研究成果
(1) 調査期間中に368人の方が亡くなりました。このうち133人(36.1%)の方が在宅で亡くなられました。
(2) 在宅療養開始直後は、自宅での死亡が他の場所での死亡よりも多くなっていました。その後、在宅での死亡の累積発生率は、他の場所での死亡の累積発生率よりも緩やかに増加していました。一方、他の場所、主に病院での死亡は、追跡期間終了まで比較的一定に増加することが特徴的でした。したがって、在宅ケアの期間が長ければ長いほど、自宅での死亡の割合が低下していたことになります。
(3) 在宅療養開始時の12の調査項目のうち以下の4項目が、在宅死亡との関連性が高い因子であることが明らかになりました。
・年齢が高いと在宅死亡が(他の場所の死亡に比べて)増加する
・着替えや歩行などの基本的日常生活動作の指数が高い(自立度が高い)と在宅死亡が(他の場所の死亡に比べて)減少する
・酸素療法を受けていると在宅死亡が(他の場所の死亡に比べて)増加する
・常勤介護者がいると在宅死亡が(他の場所の死亡に比べて)増加する
これらの変数は、患者とその家族の死に対する準備状況と関連していると考えられました。
今後の展開
今後、本研究のデータを用い、さらに解析を行い、在宅療養高齢患者さんの実態を明らかにする予定です。
本研究の成果は、11月15日にGeriatrics & Gerontology International誌オンライン版に掲載されました.
Watanabe T, Matsushima M, Kaneko M, Aoki T, Sugiyama Y, Fujinuma Y. Death at home versus other locations in older people receiving physician-led home visits: A multicenter prospective study in Japan. Geriatr. Gerontol. Int. 2022;1–8. https://doi.org/10.1111/ggi.14496
Watanabe T, Matsushima M, Kaneko M contributed equally to this article.
本研究は、JSPS科研費 JP24590819の助成をうけたものです。
研究グループ
・東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 臨床疫学研究部 教授 松島雅人
・日本医療福祉生活協同組合連合会・家庭医療学開発センター Practice-based research network(運営委員長 渡邉隆将)
研究の詳細
1.背景
急速な高齢化により、年間死亡者数は2019年の138万人から2040年には168万人に増加すると予測されており(注1、注4)、病院のキャパシティーが限界に達しています。そのため、日本政府は、医療システムの負担増に対応するため、医師による訪問診療や在宅でのみとりを推進しています(注5)。しかし、在宅での死亡の割合は過去20年間ほとんど変化していません(注1)。在宅医療を奨励する理由は、病院でのみとりの限界だけではありません。長谷川ら(注2)は、在宅医療と死に関する意識調査を行い、末期がん患者に対して、医療従事者の多く(79%)が患者の最期の場所は自宅が理想であると答えたが、実際にそうなると考えているのは、医療従事者のわずか8%であった、と報告しています。
そこで今回の研究では、日本で医師主導の在宅医療訪問を受けている患者を丹念に追跡調査し、在宅死の状況とそれに関連する因子を多施設前向きコホート研究で明らかにしました。
(2022/11/16 10:06)
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