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「認知症は治らない」という認識、半分は間違いかも 専攻医・渡邉 昂汰

 「認知症は治らない」なんて、聞いたこと、ありませんか?

 これは半分本当、半分間違いと言えるかもしれません。アルツハイマー型認知症や血管性認知症などの、いわゆる「認知症」には、残念ながらまだ根本的な治療法はありません。

 先日承認された新薬「レカネマブ」も、認知症症状の進行抑制が期待できる、というものです。

エーザイと米バイオジェンが開発し、米国で「レケンビ」の名称で発売するアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」。認知症の症状進行を遅らせると期待されている(エーザイ提供)【時事通信社】

 しかし、「まるで認知症のように見える」病気の中には、早期に治療介入することで認知機能が回復するものもあります。
 
 認知症のように見える病気

 一つ目は、喉元にある甲状腺の働きが低下する病気です。甲状腺ホルモンは、脳神経細胞の分化や、脳の形成・発達に重要な役割を担っています。

 甲状腺機能が低下した状態が続くと、脳海馬の働きが悪くなり、思考力や記憶力の低下が起こるため、うつ病や認知症と間違われることがあります。

 この病気は、主に血液検査やエコー検査で診断され、甲状腺ホルモン剤を内服することで治療できます。
 
 ◇自己判断せず受診を

 認知機能に関わりの深いビタミンは、いくつかあります。ビタミンB12は、神経細胞などの細胞膜の合成に関わっており、不足すると、認知機能低下を含む、さまざま神経障害が起きます。

 ナイアシンの欠乏も、認知症に似た神経症状を引き起こします。偏食以外にも、アルコール多飲、消化管の吸収障害などにより発症する場合があり、治療としてはビタミンの補充や食生活の改善を行います。

 他にも、慢性硬膜下血腫正常圧水頭症は、物理的に脳が圧迫されて認知機能低下を来す病気で、手術によって症状改善が期待できます。

 認知症に似た、これらの病気を見分けるのは、なかなか難しいこともありますが、認知機能回復の鍵は早期発見・早期診断です。

 自己判断はせず、一度、もの忘れ外来や認知症外来などの専門機関を受診することをお勧めします。

(了)

 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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