教えて!けいゆう先生

症状が出た時にはもう遅い? 
高齢者だからこその熱中症対策 外科医・山本 健人

 厚生労働省がまとめた「高齢者のための熱中症対策リーフレット」に、重要な記載があります。

 東京都23区内の熱中症死亡者の約8割は高齢者で、屋内での死亡者のうち約9割はエアコンを使用していなかった、というものです。

 「エアコンは健康に悪い」などの誤った思い込みが染み付いて、十分な熱中症対策ができていない高齢者は少なくありません。

 しかし、高齢者は若い頃と比べ、熱中症リスクがはるかに高くなります。 

高齢者の熱中症、「症状が出た時にはもう遅い」くらいの危機意識が本人にも家族にも重要です【時事通信社】

 なぜでしょうか?

 それには医学的な理由があります。

 ◆高齢者の特性

 厚生労働省のリーフレットには、「高齢者は特に注意が必要です」として、その理由を3点、挙げています。

 一つ目は、「体内の水分が不足しがちであること」です。

 高齢者は若い人より体の水分量が少なく、水分不足に対して余力がありません。

 その上、糖尿病などの持病の影響や、利尿薬などの内服薬の副作用で尿が多くなりやすく、脱水のリスクが高い傾向にあります。

 二つ目は、「暑さに対する感覚機能が低下していること」です。

 若い頃であれば、喉の渇きによって「水分を摂取しよう」と思えますが、高齢者はこの反応が衰えています。

 高齢者の体は、危険信号を発するのが若い人よりずいぶん遅いのです。

 ◆いきなり倒れる

 そして三つ目は、「暑さに対する体の調節機能が低下していること」です。

 暑い環境にいるとき、私たちの体は本来、多量の汗をかいたり、血管を拡張させて熱を放散しやすくしたりして、体温が上がらないよう調節します。

 ところが、こうした機能が加齢によって衰えると、体に熱がたまりやすくなります。

 以上のような特性から、高齢者は熱中症になりやすく、かつ、熱中症の危機に陥っても気づきにくい、ということが分かります。

 結果的に、高齢者は「いきなり倒れる」のです。

 「しんどいときは無理しないで」「つらい症状があればすぐに対策して」では全くもって間に合いません。

 本人にも家族にも、「症状が出た時にはもう遅い」くらいの危機感が必要でしょう。

 ◆推奨される対策

 熱中症対策として、厚生労働省のリーフレットでは、「エアコンを上手に使うこと」と「喉が渇いていなくても、こまめに水分・塩分を補給すること」の2点が強調されています。

 エアコンの使用時は、扇風機や換気扇を併用し、時々窓とドアを開けて換気をすることも大切です。

 水分については、1時間ごとにコップ1杯を心がけるのがよいでしょう。

 猛暑が続く中、全国的に熱中症で病院に搬送される事例が相次いでいます。

 早めの対策を行い、自分と家族の身を守りましょう。

(了)


 山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設3年で1000万PV超。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書に「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険」(ダイヤモンド社)など多数。


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