治療・予防 2024/12/23 05:00
薬物療法が大きく進歩
~ぼうこうなどの尿路上皮がん(虎の門病院 三浦裕司部長)~
原発性手掌(しゅしょう)多汗症は、気温の上昇や運動などの発汗を促す要因の有無にかかわらず、手のひらに大量の汗をかき、日常生活に支障を来す病気だ。国内の調査では人口の3~5%程度に起こると報告されている。
「従来は治療の選択肢が限られていましたが、最近、新たな治療薬も登場しました」と長崎大学病院(長崎市)皮膚科・アレルギー科の室田浩之教授は話す。
原発性手掌多汗症の可能性を調べる
◇若い世代に多い
原発性手掌多汗症は他の部位の多汗症と比べて発症時期が早く、幼少期から思春期に症状を自覚する人が多い。「握手や物をうまく握ることができない、手元の物がぬれて困るといった悩みを抱えるケースがよく見られます」。原因はよく分かっていない。
治療はこれまで、塩化アルミニウム外用薬や、水を張った容器に弱い電流を流して手を浸す医療機器「イオントフォレーシス」の使用が第1選択だった。これらは皮膚の汗の出口をふさぐことで発汗を抑えるとされる。「しかし塩化アルミニウムはかゆみなどが出やすい他、院内製剤として調製できる医療機関でしか処方できません。イオントフォレーシスは、高価な機器を購入すれば自宅でも治療可能ですが、通常は機器のある医療機関に何度も通院する必要があります」
他に保険適用外のボツリヌス毒素注射、発汗に関わる神経を遮断する外科手術があるが、高額な費用や副作用といった問題があり、気軽に受けられる治療とは言えなかった。
◇保険診療で処方可能
そうした中、新たな治療薬としてアポハイドローション(オキシブチニン塩酸塩)が承認され、今年6月に発売された。
多汗症では、全身に広く分布するエクリン腺(皮膚にある汗腺の一種)からの発汗が増える。交感神経から分泌されるアセチルコリンがエクリン腺から汗を出す指令役を担うが、この薬はアセチルコリンの作用を遮断し、発汗を抑制する。
同様の作用を持つ内服薬はすでにあったが、全身でアセチルコリンの働きに影響するため、喉の渇き、目の調節障害、排尿障害などが起こりやすかった。「局所的に作用する外用薬なら、こうした副作用の低減が期待できます」
1日1回、就寝前に両方の手のひらに塗布することで効果を発揮する。塗った直後は、薬の付いた手で顔や寝具に触れないように注意が必要だ。「一時的なものですが、目に入ると視力低下などが起こる恐れがあります。万が一、目に入ったら、すぐ洗い流してください」
従来の治療は実施できる医療機関が限られていたが、この治療薬は保険診療で処方できるので、一般的な皮膚科で広く治療を受けられるようになるのも利点だ。「手のひらの汗で悩んでいたら、気軽に近隣の皮膚科を受診し、相談してください」と室田教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/01/03 05:00)
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