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手荒れ、正しいケアで悩みとおさらば
~「治らない」2週間続いたら皮膚科へ~

 記者の家で今年1月、複数の家族が感染性胃腸炎に罹患(りかん)し、汚物処理に追われた手はガサガサになった。大活躍した塩素系の消毒剤が原因と思われ、手袋をはめていたものの連続使用が良くなかったようだ。新型コロナウイルス感染症対策で手洗いとアルコール消毒が日常となっている今、手荒れで悩む人が増えているという。悩みを持つ一員として、専門家に聞いてみた。

爪周りがガサガサになっている指先

爪周りがガサガサになっている指先

 ◇放置すると…イタタ!

 手荒れは特に、低温で空気が乾燥している冬に悪化することが多い。頻回の手洗いや消毒によって傷付けられた皮膚表面の角質が、冷たく乾いた空気に触れることでより硬くなり、放置したまま動かすとひび割れたり切れたりする。進行すると赤みやかゆみも伴ってくる。

 こうなると厄介で、物に触ると痛い、手洗い消毒がしみるなど、日常生活や感染対策もままならなくなる。ユースキン製薬(川崎市)企画部の高嶋俊継さんは「ケアしないとどんどん傷が深くなります」と注意を促す。

 ハンドクリームはきちんと塗っている。でも治らない。なぜか。「それはクリームの選び方、塗る量と塗り方、そしてタイミングが間違っているからです」と高嶋さん。それぞれご教授いただいた。

「子どもの手荒れが増えている」と指摘する高嶋さん。小学校の授業で正しい保湿を教える取り組みもしている

「子どもの手荒れが増えている」と指摘する高嶋さん。小学校の授業で正しい保湿を教える取り組みもしている

 ◇症状に適したクリームを選ぼう

 まず、選び方については「自分の症状に合った保湿剤かどうか。それには製品に表示されている区分を知ってください」(高嶋さん)。症状には段階がある。比較的軽い初期なのか、ぱっくりと皮膚が割れて痛みがあるのか。軽めなら表示が「化粧品」とある物や、無表示の物で対応可能。好きな香りやブランドで選んでもいい。

 重症の場合には「指定医薬部外品」や「医薬品」と書かれた、本気で治せるクリームを使う必要がある。前述した「化粧品」では、もう症状の緩和は見込めないと考えた方がよさそうだ。

 成分にも注目しよう。尿素は角質を溶解する作用があるため、傷がある部分に塗るとしみる恐れがある。指先の血流を促進したいときはビタミンE配合の製品を選ぼう。

正しいハンドクリームの塗り方。(左上から時計回りに)①適量は人さし指の第一関節一つ分②手の甲にクリームをのせて両手の甲を重ねて伸ばす③手のひらでしっかりなじませる④指一本一本に丁寧に塗り伸ばす

正しいハンドクリームの塗り方。(左上から時計回りに)①適量は人さし指の第一関節一つ分②手の甲にクリームをのせて両手の甲を重ねて伸ばす③手のひらでしっかりなじませる④指一本一本に丁寧に塗り伸ばす

 ◇たっぶり塗る

 高嶋さんが実演で手に取ったクリームの量は人さし指の第一関節一つ分ある。「多いな」という印象を持ったが「むらなく塗るには必要な量」だといい、手全体や爪の周りなど細かい部分にもしっかり塗り込むことが大事だ。

 いつでもケアできればいいが、仕事中などパソコンやスマホを扱う際、べたつきが気になる。高嶋さんは「ハンドクリームをたっぷり使い、しっかりマッサージして塗り込むのは就寝前だけでもいい」と話す。

仕上げは爪周りや指の間をマッサージして擦り込む

仕上げは爪周りや指の間をマッサージして擦り込む

 ◇長期化なら受診

 いろいろ頑張ってみたが、なかなか治らない。「2週間以上、症状が続く場合は、皮膚科を受診してください」と話すのは野村皮膚科医院(横浜市)の野村有子院長。角質が生まれ変わる「ターンオーバー」の周期である2週間ほど経過しても良くならないのは、ケアが間違っているか他の病気が隠されている可能性があるといい、「きめ細かな問診と皮膚症状の診察で手荒れか他の病気か判断し、治療を決めていきます」。

 症状が初期の場合は、日常生活の一部見直しや、保湿の正しいやり方を紹介することで、快方に向かう可能性が高い。一方、水ぶくれやひび割れが見られ、かゆみも伴うような段階にまで進行してしまったら「これは重症。場合によってはステロイド外用薬やかゆみ止めの飲み薬、腫れと痛みがあれば抗生剤が必要と判断することもあります。来院時は必ずお薬手帳を持参してください」(野村院長)。症状に合った治療薬が処方される。

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