治療・予防

複合性局所疼痛症候群「CRPS」
~外傷治癒後も痛みや腫れ(広島市立リハビリテーション病院 木村浩彰副院長)~

 骨折捻挫、手術後など、けがや傷が治ったにもかかわらず、手足に疼痛(とうつう)や腫れが残る複合性局所疼痛症候群(CRPS)。原因は不明で、けがの状況から予想されるよりも強い痛みが長引くのが特徴の一つという。

 広島市立リハビリテーション病院(広島市安佐南区)の木村浩彰副院長は「外傷の後に、説明がつかない痛みや腫れが続く場合はCRPSを疑い、早期に治療を始めることが重要です」と話す。

右手首骨折後に右手にCRPSが認められた患者のイメージ

右手首骨折後に右手にCRPSが認められた患者のイメージ

 ◇早期に治療開始を

 CRPSは、男性よりも女性に多く、骨折捻挫、手術後の発症が多い。木村副院長は「予想される程度や範囲を超える強い痛みが特徴で、患者さんが医療ミスを疑うケースもあるほどです。手や足の患部に痛覚過敏やアロディニア(わずかな刺激でも痛みが起こる)、皮膚の色調・温度変化、発汗異常などの自律神経症状、運動障害などを伴います」と説明する。

 運動障害は、関節が動く角度が狭くなったり、筋力低下や手足の震え、単純X線撮影で骨の萎縮が見られたりする。CRPSは病状が進行して固定化すると治りにくい病気のため、「確定診断を待つのではなく、症状から早期にCRPSを疑い、薬物療法や神経ブロック(局所麻酔薬などを用いて神経の働きを一時的または長期間遮断する治療法)、リハビリテーションなどを組み合わせる集学的治療を開始すべきです」。

 ◇痛み軽減にリハビリ

 CRPSの治療は、痛みの軽減により機能回復を目指す。木村副院長によると、薬物療法は、急性期の患部の腫れや皮膚温の上昇に対して、非ステロイド性消炎鎮痛薬やステロイドの使用を試みる。また、神経障害性疼痛に対して抗うつ薬や鎮痛薬(プレガバリン)、骨の萎縮に対して骨粗しょう症治療薬などが使用される。

 神経ブロックは、疼痛緩和や自律神経症状の改善を目的に、交感神経ブロックや硬膜外ブロックなどが行われる。

 木村副院長は「神経ブロックにより痛覚の興奮が抑制され、血管が拡張して血液の流れが良くなると、筋肉の緊張や痛みが和らぎます。このような効果が得られた時期に、運動機能の維持、回復を目的としたリハビリを行うことが重要です」と話す。

 また、不安や怒りなどによって気持ちが不安定になると、痛みを感じやすくなる傾向があるため、「リラックス法や認知行動療法などの心理療法の併用が有用な場合があります」。

 「CRPSは捻挫や静脈注射などの軽微な外傷でも発症します。疑わしい症状が起こった場合、直ちに治療することで改善が期待できるので、慢性疼痛外来やペインクリニックの受診を勧めます」と木村副院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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