治療・予防 2024/11/21 05:00
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アレルギーマーチとは、食物アレルギー、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患が、年齢によって次々に現れることを言う。その入り口がアトピー性皮膚炎だと知っているだろうか。「赤ちゃんがかゆそうなしぐさを見せたら、アトピー性皮膚炎のサイン。すぐに対処して」と話す専門家に詳しく聞いた。
「アトピー性皮膚炎は、症状が治まっても薬を定期的に塗り続けることが大事」と話す馬場医師
◇生後すぐに保湿ケアを
「アトピー性皮膚炎がさまざまなアレルギー疾患の原因になっていることが分かってきている」と言うのは、神奈川県立こども医療センター(横浜市)皮膚科の馬場直子部長。
例えば、ある物質を食べると、体が過剰な免疫反応を引き起こす食物アレルギー。原因物質は口からではなく、皮膚から成分の一部(抗原)が入り込み、それを排除しようとする抗体が作られ発症することが研究で明らかになっている。ある報告では、生まれて間もなく、皮膚炎の症状が無くても保湿剤を塗り続けると、32週後のアトピー性皮膚炎の発症率が低下したという。
「経皮感作(けいひかんさ)と言い、乾燥や湿疹などで皮膚のバリアー機能が低下した部分から、アレルゲンは入り込む。さまざまなアレルギー疾患のきっかけになるアトピー性皮膚炎を予防するには、生後すぐから保湿剤を毎日塗って、防御機能を高めることが大事だが、これだけで十分とは言えない」と馬場医師は呼び掛ける。
◇「ステロイドを塗ってはいけない」は誤解
皮膚が炎症を起こしている場合、治療にはステロイド外用剤を用いるが、馬場医師が憂慮するのは保護者の誤解だ。「ステロイドを塗ってはいけない、自己判断で保湿剤に切り替えたなど、『ステロイドは悪』のような考え方は間違っている」
少しでも赤みがある、カサカサ・ざらざらした状態が続く、ぶつぶつと盛り上がっているなどの症状は、炎症を起こしている証し。「炎症に保湿剤は効果が無く、むしろ余計に悪化させることも。抑えるにはステロイドが有効だ」と馬場医師。
ステロイドを塗って良くなると、治療をやめてしまうのも避けてほしいという。馬場医師は「改善に向かった状態を維持するため、医師の指示に沿ってほしい。ステロイドを徐々に減らしたり、薬剤を変えたりと、症状に適した方針が示される」と話す。薬の塗る量や頻度についても同様で、「保護者の判断に左右されたり、医師の指導が行き届いていなかったりするなどの問題がある」(馬場医師)という。
薬の量
◇正しい治療法を知ろう
「処方された塗り薬を使っても治りが悪い患者が、全体的に多いのが課題」と馬場医師。事態の改善には、医師が保護者に、使用方法をしっかり指導することが求められるという。馬場医師は「初診時に実際に一緒に塗って、量や塗り方を体で覚えてもらっている」と言う。
具体的には、軟こう・クリームは大人の人さし指の先から第1関節の長さまで出すと約0.5グラム。この分量で大人の両手のひらに相当する面積に塗ることができる。ローションなら一円玉の大きさだ。それらを肌にすり込むのではなく、均一に乗せるようにのばしてほしい。馬場医師は「症状がある部分は盛り上がっていることが多い。そうした場所に薬剤が届くようにして」とアドバイスする。
薬の塗り方
症状が良くなったように見えても、皮膚の内側には炎症が残る。「薬を完全にやめると再発が早まるため、強さを調節しながら予防的に長期間にわたって薬を塗る必要がある。まずは10年」と馬場医師は語る。
赤ちゃんや子どもにはどうしてもステロイドを使いたくないという保護者が少なからずいる。皮膚が赤くなったり多毛になったりといった副作用を心配するからだ。こうした人たちに対しては、非ステロイドの塗り薬もある。効果と安全性は実証されているため、軽症なら初期から使用可能だ。
◇肌トラブル見つけたら病院へ
アトピー性皮膚炎については、よく知られているようで実は知られていないことが多い。例えば、赤ちゃんが抱っこされている時に、大人の服などに顔をこすり付けているのはかゆいからであることや、乳児湿疹(乳児脂漏性湿疹)との違い、他のさまざまなアレルギー疾患の原因になっていることなどは、子育て経験のある人でもあまり理解していないことが製薬会社などのアンケートで判明している。
馬場医師は「乳児脂漏性湿疹は生後1カ月ごろ、一時的に皮脂の分泌が高まり、カサカサしたりかさぶたができたりする。刺激の少ない洗浄剤で、しっかり洗っていくうちに治る。アトピー性皮膚炎は症状が長期間続くのが特徴で、目安は2カ月以上とされている」と話す。その上で「赤ちゃんのお肌に気になる様子が見られたら、早めに受診してほしい。かゆみで眠れない段階まで進むと、成長や発達に支障が出る恐れもある」と注意を促した。(柴崎裕加)
(2024/02/13 05:00)
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