治療・予防

男女差無く発症
~急性大動脈解離(熊本大学病院 辻田賢一教授)~

 心臓から全身に血液を送る大動脈が何らかの原因で突然裂け、命を落とす危険もある急性大動脈解離。これまで男性に多いとされてきたが、熊本大学病院(熊本市)循環器内科の辻田賢一教授らの最新研究により、男女差は無いことが分かった。「男女共に働き盛り以降は注意が必要です」と辻田教授は呼び掛ける。

女性も注意したい急性大動脈解離

 ◇移動する激痛

 急性大動脈解離は、先天的要因によるケースもあるが、大半は動脈硬化高血圧などに起因する。特に高血圧は重要なリスクとされる。主な症状として、胸や背中の突然の激しい痛みが挙げられるが、痛みが背中から胸、または胸から背中へと移動することがあるのが大きな特徴だ。

 「70~80歳代の高齢者に多い病気ですが、発症率は40~60歳代の働き盛りから急激に上がります」。また冬場に多く、早朝から昼ぐらいまでの時間帯に多いといわれる。

 辻田教授らが宮崎県延岡市で患者266人を対象に行った研究では、男女で発症率に差は無く、病院到着前の死亡率は男性の21%に対し女性は37%と高かった。「女性の方が病院到着前の死亡率が高かった原因については、さらなる研究が必要です」

 ◇健診と血圧管理を

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)によると、急性大動脈解離は発症後48時間以内におよそ半数の患者が死に至るという。多くの場合、前触れなどはなく、突然の激しい胸背部痛に襲われる。「ただし、過去に胸や背中、腰(腹部大動脈)に痛みがあったものの自然治癒するケースもまれにあります。しかし、そのような患者は再発率が高いことが分かっています」

 そのため、年1回の健康診断受診と日々の血圧管理が早期発見と再発予防の鍵を握る。

 激しい胸痛を伴う心臓の病気として急性心筋梗塞があるが、近年は救命率が上昇しており、辻田教授は「急性大動脈解離についても救命率向上に向けた取り組みや医療体制の整備が必要です。一方、患者の皆さんには、胸や背中に突然の激しい痛みを感じたら、迷わず救急車を呼んでほしい」と訴えている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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