治療・予防

死亡率高い薬疹も
~早期治療し重症化防ぐ(新潟大学大学院 浜菜摘講師)~

 薬の副作用で起こる発疹を薬疹という。さまざまな薬疹の中で最も重症とされるのが、スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)である。重症度や予後(病状の見通し)を即時に予測するスコア「CRISTEN」を開発した新潟大学大学院皮膚科学の浜菜摘講師に話を聞いた。

SJSとTENの特徴

 ◇目や呼吸器に後遺症も

 SJS/TENは、原因となる薬を内服または注射後、数日から2週間ほどで高熱を伴って全身の皮膚や口、喉、陰部などの粘膜に赤い発疹、水膨れが表れる。「水膨れは簡単に破れてただれ、皮膚がはがれてしまいます。日本では、その面積が全身の10%未満のものをSJS、10%以上のものをTENと呼びます。目にも充血、痛みが見られます」

 原因となる薬は、消炎鎮痛薬、抗菌薬、抗けいれん薬、高尿酸血症治療薬などが多いが、市販のかぜ薬やサプリメントなどの処方薬以外の薬が原因になることもある。子どもでは感染症が原因になることも多いという。

 発生頻度は高くない。ただし、「ひとたび発症すると急速に重症化します。死亡率はSJSが約4%、TENで約30%で非常に予後が悪い。皮膚の症状が治まっても、目、呼吸器などに後遺症が出ることが少なくありません。失明に至ることもあります」。

 ◇病歴と症状で予後予測

 重症化を防ぐには、原因薬を推定して使用をやめるとともに、予想される重症度や予後に応じた治療を早期に始める必要がある。「基本的にステロイド薬の全身投与(内服または点滴)を行いますが、特に予後が悪いと予想される場合、高用量のステロイド薬を3日間点滴するステロイドパルス療法などを早期から行います」

 浜講師らが作成したCRISTENは、年齢や糖尿病、腎機能障害などの病歴、皮膚がはがれた面積の割合、粘膜障害の有無などの10項目を点数化。初診時の問診と症状の観察だけで評価でき、血液検査は必要ない。予測精度は従来の血液検査が必要な予測法と同等であることが、世界7カ国で確認された。「医療体制が整っていない発展途上国・地域でも簡便に利用できます」

 また、「服薬後に皮膚や粘膜に症状が出たら、皮膚科医に早くかかり、SJS/TENの疑いがあれば、重症薬疹診療拠点病院(92施設、2023年度)などの高次医療機関を紹介してもらってください」と浜講師は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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