治療・予防

肺の生活習慣病
~COPD(日本大学医学部付属板橋病院 權寧博主任教授)~

 慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)は、たばこの煙などの有害物質を長期間吸い込むことで気道に炎症が起こる進行性の病気。日本での推定患者数は約530万人、中高年者の約8.6%が罹患(りかん)しているとみられるが、治療を受けているのは約22万人にとどまっている。「COPDは世界の死因の第3位。甘く見てはいけません」と日本大学医学部付属板橋病院(東京都板橋区)呼吸器内科の權寧博主任教授は警鐘を鳴らす。

COPDの主な症状

 ◇別名「たばこ病」

 COPDは、かつて慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていた病気の総称で、患者のほとんどに喫煙歴(受動喫煙を含む)がある。気道に炎症が起きてせきやたんが出る他、気道が狭くなって息切れが起こる。また、体内のガス交換の場である肺胞が破壊されると、肺機能が低下し、呼吸がしにくくなる。「一度壊れた肺機能は治療をしても元には戻りません」

 COPDを放置すると呼吸器系の感染症を引き金に症状が悪化し(増悪)、命に関わる例もある。さらに、「『たばこ病』の別名を持つCOPDでは、肺がんや心臓病で亡くなる人も少なくありません」。

 呼吸機能検査

 早期発見、早期治療が重要だが、せきやたんはありふれた症状である上、息切れは加齢のせいなどと見過ごされやすい。また、特に高齢者は息切れが起こらないように生活を制限する傾向があるという。「COPDを健康診断などの胸部エックス線検査で早期発見するのは難しい。喫煙歴があり、慢性的なせき、たんや労作時の息切れがある場合は、呼吸器内科、できれば日本呼吸器学会が認定する専門医を受診してください」。確定診断にはスパイロメーターという機器を使った呼吸機能検査が必要だ。

 治療目標は症状の改善、肺機能低下の抑制、増悪の予防など。禁煙は必須で、肺機能の状態や症状などに合わせて薬物治療を行う。増悪を繰り返すごとに肺機能が低下するので、インフルエンザ肺炎球菌のワクチン接種を含めた感染症予防も重要だ。

 また、今年4月、權主任教授と製薬大手アストラゼネカの研究グループは、COPDの吸入薬治療を受けている多くの患者で、症状が残っているにもかかわらず治療が強化されていない実態を報告。不十分な治療によって患者が息苦しさを感じ、体を動かさなくなってしまう可能性があるため、權主任教授は「定期的な症状の評価と積極的な治療の見直しが必要です」と強調する。患者にはできるだけ体を動かし、感じた症状を診察時に医師に告げることを勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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