治療・予防

ウイルス再活性化で顔面神経まひ
~ラムゼイ・ハント症候群(東海大学医学部付属病院 濱田昌史教授)~

 バイオリニストの葉加瀬太郎さんが昨年発症を公表した、顔面神経まひ「ラムゼイ・ハント症候群」。東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)耳鼻咽喉科・頭頸部外科の濱田昌史教授によると、発症には水ぼうそう(水痘)・帯状疱疹(ほうしん)ウイルスが関わっていると説明する。

顔面神経まひの症状(左側の場合)

 ◇免疫低下を機に

 特徴的な症状は、耳たぶや外耳道、耳の周囲に小さな水膨れが表れる帯状疱疹と、顔の片側の動きが急に悪くなる顔面神経まひだ。まぶたを閉じにくい、口元から水がこぼれる、といった状態になる。発症に男女差、顔の左右差はなく、20~30代と50~60代にピークがある。

 「水痘・帯状疱疹ウイルスは神経を好む性質があり、水ぼうそうが治った後、脳神経や脊髄の神経節という部位に潜伏しています」と濱田教授。

 ウイルスは普段は免疫の働きで抑え込まれているが、ストレスなどで免疫が低下すると、再び増え始める。この再活性化で、顔の筋肉を動かす神経が障害される。他の神経に障害が及び、難聴や耳鳴り、めまいを伴うこともある。

 ◇3日以内に治療を

 まひの自然治癒が期待できるのは患者の3割に満たず、抗ウイルス薬でウイルスの増殖を抑え、ステロイド剤で神経の炎症や腫れを抑える治療を行う。

 「ウイルスが増えてしまってからでは効果が不十分なので、発症から3日以内に適切な治療を始めることが重要です」

 10日間ほどの薬物治療で効果がなければ、神経の腫れを解除して炎症を引かせる目的で手術を考えるという。リハビリテーションも重要で、重症の患者は治療開始当初から行うことで後遺症を防ぐ。

 成人の9割は水ぼうそうの経験があり、ラムゼイ・ハント症候群のリスクがある。濱田教授によると、予防のポイントは、睡眠不足を避けて規則正しい生活を送り、適度な運動をして、ストレスをためないようにすることだ。その上で、「顔の動きがおかしいと感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診してください」と助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】

新着トピックス