急な下半身まひで発症
~脊髄梗塞(秋田厚生医療センター 小林孝副院長)~
「体操のお兄さん」として知られるタレントの佐藤弘道さんが発症した脊髄梗塞。背骨の内部を通る神経の束である脊髄に栄養を供給する血管が詰まり、脊髄の一部が壊死(えし)する病気だ。秋田厚生医療センター(秋田市)の小林孝副院長(整形外科)は治療について、「自然軽快は珍しいため、残った機能を生かして日常の生活動作を向上させることが重要です」と語る。

脊髄梗塞
◇血管が詰まる
脊髄梗塞は60~70代の発症が多い。「急に発症し、何月何日に起きたかを患者がはっきり覚えているのが特徴です」
症状は、背中の痛み、首の痛み、手足のしびれなど。特徴的なのは運動機能のまひで、急に足が動かなくなり、歩けないことも。「尿が出にくい」「肛門をきゅっと締めることが難しい」といったぼうこう直腸障害、「触った感じは分かるが、湯などの熱さが分からない」という感覚障害もある。どの症状が表れるかは、首から腰まで長い脊髄のどこで血管が詰まったかによる。
患者数は、脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中を患った人に比べて50分の1以下。秋田厚生医療センターでも「1年に1人いるかどうか」という程度という。
小林副院長らが診療した脊髄梗塞患者10人のうち、高血圧の人は6人、脂質異常症の人は3人だった。喫煙者は3人いた。「これらに起因する動脈硬化が脊髄梗塞の発症に関係する可能性がありますが、原因や発症のメカニズムは明らかになっていません」
◇リハビリ主体に
症状を回復させる薬物治療は確立されておらず、リハビリテーションが主体となる。
入院した場合は、急性期を乗り越えたらリハビリ病院に移る。症状が軽ければ、自宅に戻り通院で続けるという。
合併症の治療も重要で、尿を出せないときは尿道に管を入れて出し、尿がたまって感染を起こしたら抗菌薬を用いる。肛門の機能が低下していれば、便を適度に軟らかくする薬を使う。
確かな予防法はないが、重要な対策は早期の診断とリハビリテーションだ。「足に力が入らない、手に熱い感じが分からないといった症状が急に表れたら、救急外来を受診してください」と小林副院長はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/03/17 05:00)
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